次に私達が向かったのは4階にある
カラオケだった。
通されたのは、少し広めの部屋。
ソファはコの字型で、
自然と人数が多い分距離が近くなる
配置だった。
座る順番の自然の流れができ、
横並びに理央・私・晃。
向かい側に夏奈ちゃん・千歌ちゃん・遥陽君。
遥陽君の横少し端に瑠斗君。
千歌
「この配置、なんか緊張しない?」
「また、アキ君と理央君琴音ちゃんと」
「一緒じゃん。」
千歌が笑いながら言う。
夏奈
「今さらでしょ(笑)」
私が即座に千歌ちゃんの言葉の後に返す。
もう大体のいつものパターンだから
今更私は驚かないよ。
でも、晃君の隣りに座りたかったなぁと
ちょっと勇気を振り絞って言えなかった
自分に後悔している。
遥陽
「もう今日ずっと緊張してる空気だったし」
俺は全体を見渡して、静かに言った。
遥陽
「とりあえず、」
「歌って切り替えようぜっ。」
注文した飲み物とケーキが運ばれてくる。
白いホイップクリームがたっぷり乗ったケーキに、
琴音
「かわいい!」
「こう言う誕生日用のケーキも」
「カラオケにはあるんだね!」
琴音が目を輝かせた。
千歌
「予約したら作ってくれるんだよ!」
「昨日予約しておいたの♪」
「写真撮ろ!」
琴音
「千歌ちゃんありがとう!」
千歌ちゃんがスマホを構える。
ロウソクに火が灯り、
パシャリとスマホの
カメラのシャター音が鳴り響く。
琴音以外全員
「せーの!」
琴音以外全員
「ハッピーバースデー、琴音ー!」
一斉にみんなの声が重なり、
私は少し照れながらも凄く嬉しくて、
満面の笑みが溢れた。
ケーキを切り分け、みんなで食べ始める。
琴音
「甘っ!」
「最高に甘くて美味しい!」
琴音が大きな声を上げる。
本当に美味しそうな顔をしながら
食べる琴音を俺は微笑みながら
見ていると、琴音の右頬に
ホイップクリームが付いてるのを
見つける。
理央
「それ、顔に付いてるよ。」
俺は笑って自分の右頬に指を指して、
琴音に付いてる箇所を教えた。
琴音
「え?」
琴音はきょとんとしたまま、自分の頬を触る。
琴音
「どこ?」
理央
「そのまま、そのまま」
「じっとしてて。」
理央は琴音の右頬に付いた、
ホイップクリームを人差し指で拭き取って
自分の口に拭き取ったホイップクリームを
舐めた。
そして俺は立ち上がってトイレに向かう。
理央
「ちょっとトイレ。」
琴音
「理央ありがとう///。」
理央は堂々と私の頬に付いたホイップクリーム
を指で取って舐めて部屋を出て行った。
理央が出て行ってその直後だった……
晃が、そっと私の方に顔を近づける。
晃
「琴音、動くなよ。」
低く、優しい声が耳元に吸い付いてくる。
ちょっ……!近い!
どうしちゃったの晃……。
琴音
「え、なに?」
琴音が瞬きをする。
それはとても不思議そうで、
自分の髪にホイップクリームが
付いてる事に気が付いてない。
さっき、理央が右頬に付いてる
ホイップクリームを取った時、
凄く胸がモヤモヤした。
最初に気付いたのは俺なのに……
何もできない不甲斐なさが心を蝕む。
晃はポケットティッシュを取り出し、
晃
「ここ……。」
琴音の前髪の横、
こめかみのあたりを指差した。
白いホイップクリームが、
ほんの少しだけ付いている。
晃は、触れるか触れないかの距離で、
そっと拭き取る。
指先が、髪に軽く触れた。
晃
「……はい、取れた。」
「なんでそこにもホイップクリーム」
「付くの?」
「本当……お前……可愛いし」
「おっちょこちょいだよな。」
琴音
「え、ほんと?」
琴音は少し首を傾げ、
琴音
「全然分かんなかった……」
「って言うか、おっちょこちょいでも」
「可愛いくもないよー。」
と、天然な一言……
はぁ……マジで無自覚にもほどがある。
琴音
「でも、気付かないままだったら」
「大変だったから取ってくれてありがとう!」
俺は、苦笑しながらも視線を外せずにいた。
こんなふうに世話を焼ける距離。
触れてしまえば壊れてしまいそうなのに、
それでも離れがたい。
こうしてずっと傍に居たい……。
琴音
「晃?どうしたの?」
「ボーッとして。」
琴音が不思議そうに覗き込む。
その距離も近くて直視できない……。
晃
「……なんでもない。」
俺は一歩琴音との距離を引いた。
そのタイミングで、ドアが開く音がした。
理央
「戻ったー。」
理央が戻ってきた。


