君の事好きになっても良いですか?


*夏奈*


アスファルトを踏むたびに、
コツ、コツと靴音が響く。

普段なら気にならないその音が、
今夜はやけに大きい。

街灯の下を通るたび、
影が長く伸びては、また短くなる。

まるで、
私の気持ちみたいだと思った。


晃君の顔が、何度も頭に浮かぶ。

驚いた目。
少し困った沈黙。
そして――真っ直ぐすぎる言葉。


”琴音のことしか考えられない”


分かってた。
本当に、最初から……。
私は途中から晃君を好きになった身だもん。

それでも、
聞かずにはいられなかった。

聞かなかったら、
自分の気持ちに嘘をつくことになるから。



歩きながら、
指先をぎゅっと握る。

さっきまで、
同じ空気の中にいたのに、
今はもう一人。

でも、孤独とは違う。

ちゃんと、自分で選んで言った。


”私が振り向かせるから”

あの言葉を思い出して、
小さく笑う。

強がりでも、
宣戦布告でもない。

ただ、
逃げないための言葉だった。

好きになったことを、
なかったことにしない為の。


夕風が、優しく私の頬を撫でる。

少しだけ、目の奥が熱くなる。

でも、涙は落ちなかった。



泣いたら、
全部が”かわいそうな恋”
になってしまう気がして。

私は、そんな風に終わらせたくなかった。