「……ねぇ、晃君。」
「何?」
私は、意を決して聞いた。
「琴音ちゃんのこと……」
「まだ、好き?」
一瞬、
晃君の動きが止まった。
すっごい驚いた顔。
そして一気に顔が赤くなってる晃君。
言葉にされなくても分かる。
本当に、
予想してなかったんだと思う。
「え……?」
どうして、夏奈は俺の気持ちに分かるんだ?
少し考えてから、正直に答える。
「……うん」
「ずっと好き。」
その言葉で、
胸の奥が静かに崩れた。
でも、
涙は出なかった。
そして、私はついに言ってしまう。
ここで言わなきゃ多分後悔すると、
私の身体が、勝手に動き出した。
「私ね……。」
声が震えないように、
ゆっくり言葉を選ぶ。
「晃君のこと、好き。」
横顔を見る勇気がなくて、
前を向いたまま続けた。
「最初は分かんなかった」
「でも、文化祭のあと」
「晃君の優しさ見て……」
一呼吸をして私は続けた。
「時間かかってもいい」
「私が、振り向かせるから。」
頭が真っ白になった。
理解するまでに、少し時間がかかった。
「……え?」
「それ、本当なのか?」
夏奈が、俺を好き?
そんな発想、一度もなかった。
「本当だよ。」
「嘘ついてどうすんのさ(笑)。」
そう言って夏奈は笑う。
だけど、夏奈のその笑顔は
いつもと違い悲しそうに作り笑いをしていた。
きっと夏奈はこれから俺が言う答えを
もう知ってるのだと思う。
「夏奈……ごめん。」
言葉を探して、やっとそれだけ出た。
「俺、夏奈の気持ち気づいてなかった。」
「でも……。」
胸の奥を、正直に言葉にする。
「俺はこの先もずっと」
「琴音のことしか考えられない。」
夏奈は、小さく笑った。
泣きそうなのに、泣かない顔。
「知ってるよ。」
「そう言う一途なところも含めて」
「好きになったんだもん。」
”琴音のことしか考えられない”
その一言が、胸に刺さる。
「私が勝手に好きでいるだけだから」
「気にしないで。」
その強さが、優しさが逆に苦しかった。
「夏奈ごめん俺の事はいいから」
「先に進んでほしい……。」
「俺、相当馬鹿なんだよ。」
「今、琴音は理央と付き合ってるけど、」
「いつか、別れて戻ってくるのを」
「待ってるのだと思う。」
「それは理央に限らず違う相手だったと」
「してもそうしてる。」
「さすがに結婚したら考えるけど……。」
晃君……が琴音ちゃんに対する想いが
計り知れないほど強いのを痛感した。
そりゃ、私が晃を好きになった時間と
晃君が琴音ちゃんの事想ってる時間に
比べたら短いかもしれないけれど……
だけど、私もまだこの好きは
消したくないしすぐに忘れる事はできない。
「晃君、私次に進めるまで」
「自分の気持ちに嘘ついてまで」
「晃君を今すぐ忘れる事はできないから。」
「だから、迷惑かけないから」
「次に進めるまでは好きでいさせて。」
「あぁ……わかった。」
「俺もその気持ちは良く分かるから」
「否定はしないよ。」
「ありがとう晃君。」
「後、引き止めちゃってごめんね。」
「明日からいつも通りに戻るから。」
「うん……。」
「じゃあ、私こっちだから。」
立ち上がる夏奈がとても切なく見えた。
応えて上げられない罪悪感が残る。
でも、ここで中途半端な言葉を
夏奈に言っても彼女をもっと傷つける
事になる。
だから……俺は正直に伝えた。
だけど、帰ろうとする夏奈にかける
言葉は……
「……夏奈。」
何を言えばいいか分からず、
名前だけ呼んだ。
「私なら大丈夫だよ。」
振り返らず、
そう言って夏奈は笑顔で手を振り、
綾部の夜の街へ消えていった。


