晃……?
夏奈ちゃん……?
視界の端に映った、見慣れた横顔。
隣には、夏奈ちゃん。
晃と夏奈ちゃんの2人だけって
珍しい。
夏奈ちゃん、文化祭の日から
晃の事好きになったんだよね。
声、掛けない方が良いよね。
私は理央を違う方向に誘導しようと
したが、その行動は遅かった。
理央
「晃?夏奈?」
理央の声が先に出る。
晃は少し驚いた顔をして、
すぐにいつもの表情に戻った。
理央
「晃……夏奈。」
「偶然だね。」
アクセサリー売り場を出たところで、
聞き慣れた声がした。
琴音と理央だ……。
なんでこんな時に遭遇するんだよ。
晃
「夏奈と一緒に、」
「琴音の誕生日プレゼント選びに来てた。」
俺が平然を装って話すと、夏奈もそれに
続いていつものテンションで話す。
夏奈
「そうなの!」
「晃君が一緒に行こうって誘ってくれてね。」
えっ!?
私の誕生日プレゼント買いに来て
くれてるの?
嬉しい……。
琴音
「えっ!?そうなの?」
「気を遣わなくても良いのにー。」
「でも、ありがとう!」
「嬉しい!」
琴音は少し驚いた顔をしながら言って
素直に笑った。
その言葉に俺は、
胸がちくりと痛む。
――気を遣ってるわけじゃない。
ただ、
想ってるだけなんだけど。
その気持ちは、口には出せない。
「夏奈ちゃん、晃と2人で」
「出かけるの初めてだね。」
私がそう言うと、
夏奈ちゃんは一瞬だけ笑って、
小さく頷いた。
「うん、今日は付き添い。」
その言葉に、
私は何の疑いも持たなかった。
晃が誰と買い物をしていようと、
それがどういう意味を持つかなんて、
考えたこともなかったけど、
夏奈ちゃんすごい頑張ってるんだなぁ。
応援したくなる。
俺は琴音と晃のやり取りを見て、
はっきり分かった。
温度が、違う。
琴音はただの幼なじみとして話している。
晃だけが、
ほんの少しだけ距離を測りながら立っている。
そして――
夏奈。
晃に向ける目が、分かりやすすぎる。
長かい事幼なじみとして過ごして
きたけど、こんな夏奈初めて見た。
晃本人だけが、
それに気づいていない。
……なるほどな。
俺が色々頭で考えていると
晃が喋り出す。
晃
「俺飲みの物買ってくる。」
理央
「俺も喉乾いたし」
「頼んで良い?」
晃が頷いて離れたのを確認してから、
俺は夏奈の方を見た。
四人で並んだ瞬間、
自分の立ち位置が、
はっきりしてしまった。
私は、
“晃の隣にいる人”じゃない。
ただの、付き添い。
琴音ちゃんは、
何も知らない顔で笑っている。
それが、
悪意のない分だけ、余計に苦しかった。
晃が離れたタイミングで、理央がこちらを見る。
理央
「夏奈。」
その一言で、
もう逃げられないと分かった。


