週末、土曜日のショッピングモールは、
入口に立った瞬間から空気が違った。
人の波。
子どもの笑い声。
スピーカーから流れる、
少しうるさいくらいのBGM。
「人、多いな……。」
思わず口に出すと、
隣を歩く夏奈が小さく笑った。
「土曜日だもん。覚悟しないと(笑)」
その声はいつも通りで、
特別な響きはなかった。
――少なくとも、俺には。
俺の頭の中にあるのは、
ただ一つ。
琴音の誕生日プレゼント、何にするか。
アクセサリー売り場の前で足を止める。
ガラスケースの中で、
小さな光が無数に反射していた。
「……こういうの、どう思う?」
俺が聞くと、
夏奈はケースを覗き込み、
真剣な顔で考え始める。
「うーん……」
「琴音ちゃんは」
「派手なのより、シンプルな方が」
「好きじゃない?」
夏奈が言ったその言葉に、
自然と過去の記憶が浮かぶ。
中学の時放課後、
夕焼けの中で笑っていた琴音。
白いシャツに、控えめな色の小物。
「……確かに。」
無意識に頷いていた。
「色もさ」
「ゴールドより、シルバーかな。」
夏奈の声は落ち着いていて、
客観的で、
誰かを想って選ぶことに慣れている感じがした。
俺はそれを頼れる友達だな
くらいにしか思っていなかった。
晃君の横顔を、私は何度も盗み見ていた。
ショーケースを覗く横顔。
真剣で、少し眉間にしわが寄っていて。
……やっぱり。
晃君は琴音ちゃんのことになると、
こんな顔をする。
私がどんな表情で隣に立っていても、
気づかないくらい。
それが分かっているから、
余計に胸が痛んだ。
「じゃあ、こっちは?」
私は、晃君の視線が向いていない
方の棚を指さす。
晃君は一瞬だけそっちを見て、
すぐに首を振った。
「……いや」
「琴音は、そっちじゃない。」
迷いがなかった。


