晃が去った後、
俺と琴音の間に静かな沈黙が落ちた。
街灯の光に照らされた琴音の横顔。
泣いたあとみたいに、
少しだけ目が赤い。
……全部、俺のせいだ。
琴音……ごめん……。
「琴音。」
名前を呼ぶだけで、喉が詰まる。
「さっきは……ごめん」
「俺……言い方、最低だった。」
琴音は、すぐには答えなかった。
でも、逃げもしなかった。
それだけで、
胸が少しだけ救われる。
「元カノがどうでもいいって言ったのは」
「琴音の気持ちを軽く見たわけじゃない」
視線を逸らさず、続ける。
「言えなかったのは……」
「失うのが、怖かったんだ。」
琴音の指先が、わずかにピクリと動く。
「でも」
「言わないことで、不安にさせた」
「それは、俺の弱さだ。」
しばらくして、
琴音が小さく息を吸った。
「……私ね」
「信じたいのに、置いていかれた気がして」
「それが、すごく寂しかった。」
琴音の顔が儚さを増す。
そんな彼女を見てると胸が締めつけられる。
「ごめん。」
「もう、逃げない!」
「ちゃんと話す。」
そう言って、
俺は一歩、距離を縮めた。
琴音が拒まなかったから、
そのまま、そっと抱き寄せる。
腕の中の体温が、
現実だと教えてくれる。
「……理央」
私は小さな声で理央の名前を呼んだ。
そっと優しい理央の温もり。
そっと抱き寄せられて感じる体温が
温かく、私の心を穏やかな気持ちにしてくれた。
これだけで十分気持ちが伝わる……。
言葉にしなくとも理央のこの温もりで
私は安心する。
俺は、迷わず顔を近づけた。
触れるだけのはずが、
気づけば、深く、想いを込めたキスになる。
「んっ…………!!」
私の肩が、びくっと揺れる。
初めて感じる近さに、
驚きと、戸惑いが一気に体全部に
電流が流れるみたいに入ってくる。
今までと違うキス……。
こんなの初めてでキャパオーバーに
なりそうになる。
それでも離れたくない気持ち。
私も理央の気持ちに応えたくて
理央と同じ事を見よう見まねでやってみる。
すると理央の肩もびくっと揺れるのが
わかった。
「んっ!!」
琴音……!?
ヤバっ……まさか琴音も同じように
してくれるなんて思ってなく。
こんなにも俺の事が好きだって
気持ちが全部が伝わってくる。
もうこれ以上は俺の理性が飛ぶ前に
止めないと……。
俺はそっと、力を緩めた。
「……怖かった?」
そう囁くと、
琴音は大きく首を振る。
「……びっくりしただけ。」
「だけど、私も応えたくて……///。」
その言葉に、胸の奥が熱くなる。
そして照れている琴音が更に
可愛いくて……。
「好きだ……大好きだよ。」
「誰よりも、大事だ。」
琴音は、俺の服をきゅっと掴んで、
小さく頷いた。
「……うん」
その一言で、
全部が報われた気がした。
夜風が、二人の間を静かに通り抜ける。
喧嘩は、終わった。
でもこれは、終わりじゃない。
もっとちゃんと向き合うための、
始まりだった。


