君の事好きになっても良いですか?

──店内 理央・夏奈・遥陽



カフェの中は、
さっきまでよりずっと静かに感じた。

空になったカップ。
冷めきったテーブル。

理央は、
そこに残された自分の居場所のなさを、
ぼんやりと見つめていた。

……俺、何やってんだ。


「はぁ……」

無意識に漏れた溜め息。


夏奈
「ため息つく余裕あるんだ?」

不意に、横から声が飛んできた。

理央
「……え?」

顔を上げると、そこにいたのは……。

理央
「夏奈……? 遥陽……?」


思わず声が裏返る。

理央
「え、なんで……」
「ていうか、居たの?」

完全に油断していた。


今になって2人の存在を認識した自分に、
余計、情けなさが増す。

遥陽は、
椅子にどかっと腰を下ろし、
腕を組んだ。

遥陽
「お前さ。」
「今、自分が何したか、分かってる?」


その口調は、
ふざけたいつもの遥陽じゃなかった。

理央は、
何も言えずに視線を落とす。

理央
「……言葉、間違えた。」

それだけ、絞り出した。



夏奈は、俺の正面に立ち、まっすぐに目を見た。

夏奈
「“間違えた”で済むなら、」
「琴音ちゃん、泣いてない。」


その一言が、
胸に、強く突き刺さる。

夏奈
「理央。」
「琴音ちゃん、不安だったんだよ。」
「別の学校で、見えない時間があって、」
「それでも信じようとしてた。」


理央
「……分かってる。」

声が、震えた。

夏奈
「でも、分かってなかったから、」
「今こうなってるんでしょ?」


夏奈の言葉は、
優しさと厳しさが同時にあった。


遥陽が、
低く息を吐く。

遥陽
「それにさ。」
「晃、追いかけて行った。」



その言葉に、
理央の肩が、ぴくっと揺れた。

理央
「……知ってる。」


知ってる……見てた。

あの一瞬で、晃は迷わず動いた。


理央
「俺が恋人なのに、」
「追いかけたの、晃だった。」


遥陽は、
はっきりと言い切る。


遥陽
「それ、どう思う?」


理央は、
ゆっくりと顔を上げる。


理央
「俺……情けない。」

声が、めちゃくちゃかすれる。

理央
「俺、琴音の彼氏なのに。」
「一番大事な時に、動けなかった。」

夏奈は、
一歩だけ距離を詰めた。

夏奈
「なら、今から動けば良いんだよ。」

理央
「……え?」

夏奈
「これ以上拗らす前に、」
「早く仲直りした方が良い」
「と思うよ。」


その言葉は、
命令じゃない。
背中を押す声だった。