*晃*
カフェのドアが閉まる音が胸の奥に、
鈍く響いた。
……行った。
琴音が、あの顔のまま外に出た。
瞳にいっぱい涙を溜め込んで……。
考えるより先に、
身体が立ち上がっていた。
追いかける理由を、
頭で整理する暇なんてなかった。
ただ、分かっていた。
今、1人にしたらダメだ。
それだけ。
外に出ると、
夕方の冷たい風が頬を掠める。
少し前を歩く琴音の背中。
いつもより、ずっと小さく見えた。
……まただ。
守るとか、支えるとか、
綺麗な言葉を並べる前に。
俺は結局、琴音が泣きそうになると、
放っておけない。
それは、
幼なじみだからなのか。
それとも――
分かってる。
俺は、もうフラれてる。
”幼なじみとしてしか見られない”
そう、はっきり言われた。
それなのに、
こうして追いかけている自分がいる。
琴音が好きだから。
理央の彼女だ。
俺が割り込む権利なんて、ない。
それでも。
理央が立ち尽くして、
動けなかったあの一瞬。
理央が行かないなら……俺が行く。
……その間に、
俺は動いてしまった。
卑怯だと、思う。
でも、
見ないふりは、もっと卑怯だ。
晃 side 終わり


