……噂?
胸が、ずしりと重くなる。
「言わなかったのは……」
「心配させたくなかった。」
正直な気持ちだった。
「何もないことを、わざわざ言って」
「琴音が不安になるのが、嫌で……」
「それ、理央の都合だよね。」
琴音の言葉は、
静かだけど、鋭かった。
「私の気持ち、考えてくれた?」
私……ダメ……こんな事言ったらわがまま
じゃん。
だけど、この感情はヤキモチ・嫉妬から
生まれて自分勝手な事言ってしまった。
俺はその問いに、
すぐ答えられなかった。
─見守る3人(夏奈・晃・遥陽)
カフェの少し奥、観葉植物の影になる席。
俺・夏奈・晃は
飲み物を前に、ほとんど手をつけずにいた。
遥陽
「……空気、重くね?」
声を潜めて呟く。
夏奈
「なんだか……深刻な空気が」
「漂ってるよね。」
晃
「はぁ……。」
琴音ちゃんと理央の間に、
見えない壁があるのが分かる。
やっぱり、来てよかった……よ。
放っておける雰囲気じゃない。
そして、
無意識に晃の横顔を盗み見る。
晃は、
琴音ちゃんだけを見ていた。
……そうだよね。
胸が、少し痛む。
琴音……。
遠くから聞こえる琴音の声のトーン、
視線の落とし方、全部が“限界に近い”
ことを示している。
このままじゃ……
晃は、いつでも動けるよう、
背筋を伸ばした。
「……私が気にしすぎなのかな」
ぽつりと零れた言葉。
「でも、好きだから」
「理央のこと、信じたいからこそ……」
そこまで言って、
言葉が詰まる。
琴音の視線が、
テーブルの上のコップに落ちたまま動かない。
これは……やばい。
ちゃんと説明しなきゃ。
そう思ってるのに、
焦りばかりが先に立つ。
「噂で聞いたって言われてもさ……」
理央は、思わず語気を強めてしまう。
「もう本当に関係ないんだよ。」
「元カノなんて、正直どうでもいいだろ。」
言った瞬間――
しまった、と思った。
違う、そういう意味じゃ……ないんだ。
自分の中では、
“琴音以外は眼中にない”
その気持ちを伝えたつもりだった。
でも、
言葉は、選び間違えたみたいだ。
ダメだ……今日は裏目に事が進んでしまう。


