──次の日
白鷺高校の校門から少し離れた、
落ち着いた雰囲気の小さなカフェ。
放課後の時間帯で、
制服姿の生徒もちらほら見える。
私は、窓際の席に座り、
ストローを指先で弄びながら、
何度も入口のドアを見ていた。
来るって分かってるのに……。
心臓が落ち着かない。
元カノの噂を聞いてから、
理央に会うまでの時間が、やけに長く感じた。
カラン、と音を立ててドアが開く。
理央だ。
その姿を見た瞬間、
胸の奥が、きゅっと締めつけられた。
会いたかった……。
でも、怖い……。
理央は琴音を見つけると、
少し安心したように微笑んで、
席に近づいてきた。
「……待たせてごめん。」
「ううん」
「大丈夫、そんなに待ってないよ。」
声は出たけれど、
感情までは追いついてこなかった。
白鷺高の近くまで来るのは、
いつも少し緊張する。
ここは琴音の“日常”で、
自分の知らない時間が詰まった場所だから。
カフェに入って、琴音を見つけた瞬間、
胸の奥が少しだけ軽くなった。
ちゃんと話そう……
そう決めていた。
だけど……
向かい合って座った琴音の表情は、
思っていたよりも硬くて、喉の奥が詰まる。
「……元カノのこと、聞いたんだよね?」
「誰から聞いたの?」
先に切り出したのは、
俺からだった。
「千歌ちゃんの部活の先輩が」
「たまたま目撃したって、」
「千歌ちゃんが部活中に噂聞いちゃった」
「らしく、心配して私に教えてくれた。」
「そっか。」
「琴音。」
「偶然会っただけだ。」
「本当に、それだけだよ。」
言い訳に聞こえないよう、
慎重に言葉を選ぶ。
「……うん。」
頷いたけれど、
納得はできていなかった。
「でも、どうして言ってくれなかったの?」
声は、思ったより静かだった。
怒っているというより、
傷ついている自分を、
自分で抑え込んでいる感じ。
なんだろ……この感情わ。
「私、別の学校だから」
「理央の周りで起きてること、」
「何も分からない。」
理央の視線が、少し揺れる。
「噂で知るの、すごく嫌だった。」
「こと言う事は早く理央から」
「言って欲しかった。」
その一言で、
理央の表情がはっきりと変わった。


