──夕方
文化祭も、終盤に差し掛かる。
他の生徒達から、
”明日も頑張ろうとか”
”楽しかったー”とか声音が聞こえる。
放送部から校内放送が流れる。
「これを持ちまして文化祭は」
「まもなく終了です。」
いっぱい涙も流して、
いっぱい晃君に話しを聞いてもらって。
私の心が大分落ち着いたから私と晃君は、
昇降口近くで、みんなと合流した。
先に来ていたのは――
琴音、千歌、理央、遥陽。
琴音ちゃんが私の顔を見るなり、
少し心配そうに近づいてくる。
琴音
「夏奈ちゃん、大丈夫?」
夏奈
「うん……ちょっと色々あったけど。」
「この後、ちょっと話したい事あるから」
「琴音ちゃんと千歌ちゃん良いかな?」
琴音
「もちろんだよ!」
「夏奈ちゃんの全部話したい事、」
「聞くよ。」
そう言って琴音ちゃんは私の右腕を組んだ。
そして千歌ちゃんも今すぐここで
何も聞かずにぎゅっと腕を組んでくれた。
千歌
「もちろん!」
「今は1日目の文化祭の最後、楽しも。」
……優しいな、本当に。
2人共大好き。
理央は、
少し離れたところで
晃君と目を合わせ、何も言わずに頷いた。
遥陽は、
空気を察してか、明るく言う。
遥陽
「とりあえず!
「最後に写真撮ろうぜ!」
その一言で、みんなの表情が少し緩んだ。
── 文化祭1日目・放課後
夕方の校舎は、
昼間の喧騒が嘘みたいに静かだった。
机の上には、
片付けきれなかった紙コップと、
メニュー表と明日用の食器などが置かれている。
私は、
自分の教室の一番後ろの自分の席に座っていた。
理央と遥陽と晃君は、
「先に帰るな」
そう言って、
気を遣うように教室を出ていった。
ドアが閉まる音が、
やけに大きく響く。
残ったのは――
私と琴音ちゃんと、千歌ちゃん。
琴音ちゃんが、
そっと私の前の椅子に座る。
千歌ちゃんは、
私の隣の机に腰を下ろした。
どっちも、何も言わない。
だけど2人の表情は
”話すまで待つよ”って顔をしてる。
それが、余計に胸にくる。
私は、ぎゅっと手を握った。
夏奈
「実は……今日ね……」
声が、少し震えた。
夏奈
「昼休憩のとき、彼氏から電話きて……。」
一瞬、琴音ちゃんの眉が動いた気がした。
千歌ちゃんは何も言わずに私を見る。
夏奈
「別れようって、言われちゃった。」
空気が、止まった。
私は、自分でも驚くくらい冷静な声で続けた。
夏奈
「理由は……」
「他に好きな人ができたんだって。」
「最近すれ違ってて、」
「あまり上手くいってなかったんだよね。」
「覚悟はしてたんだ。」
「私も正直、自分の気持ちが」
「分からなかったんだ。」
笑おうとして、失敗した。
琴音
「……そっか」
「夏奈ちゃん……辛いね……。」
その一言が、すごく優しかった。
千歌
「……辛かったんだね。」
その瞬間、胸の奥に溜めてたものが、
一気に溢れそうになる。
でも……本題は、ここからだった。
夏奈
「それで……ね。」
夏奈
「今日、たまたま私が泣いての」
「晃君に見られちゃってね……」
「晃君に、全部話しちゃった。」
琴音の目が、ほんの少しだけ見開かれる。
夏奈
「慰めてもらって……頭、撫でられて。」
一瞬の間。
そして、
私ははっきり言った。
夏奈
「その時に、晃君のこと……
「好きになっちゃったって、」
気づいちゃった。」
「最初、今日ね私の名前普段呼び捨て」
「しないのに、今日初めて”夏奈”って」
「呼ばれて、キュンとしちゃって、」
「だけど、それは気のせいだと思った」
「のだけど違ったみたい……。」
言っちゃった……。
心臓が、うるさいくらい鳴る。
次の瞬間大きな声で、
千歌ちゃんが叫んだ。
千歌
「えっ!?!?!?!?」
「ちょ、待って待って!」
「それ、めっちゃいいじゃん!!」
待って!夏奈ちゃんがアキ君の事好きで、
アキ君は琴音ちゃんが好きで……
だけど琴音ちゃんには理央君がいて。
夏奈ちゃんはアキ君の気持ちも知ってる。
って事はもう、アキ君は夏奈と一緒に
なった方が良いに決まってんじゃん!
アキ君も前に進んだ方が絶対に良い。
そう私は頭の中で思考回路する。
琴音ちゃんも、
驚いた顔のまますぐに笑顔になる。
琴音
「……え、夏奈ちゃん、それ本気?」
夏奈
「……うん」
私が小さく頷くと、
二人は顔を見合わせて――
次の瞬間、
同時に私の方を向いた。


