君の事好きになっても良いですか?



しばらく沈黙が電話越しから
流れ込んでくる。
そしてついに、決定的な言葉を
告げられる。


前田
「中途半端なまま付き合うの、」
「夏奈にも失礼だと思う。」
「別れよう。」


あぁこの人……ずるいな。

ちゃんとした言葉なのに、
逃げてるようにも聞こえる。


夏奈
「……そっか。」


声が震えないように、
必死だった。


夏奈
「今までありがとう。」

それだけ言って、
通話を切った。


私……ちゃんと好きだった。
前田さんの事。
だけど、私もどこかで冷めてた気持ちも
あったかもしれない。
でも、ちゃんと好きで付き合ってたから
今までの事、鮮明に頭にフラッシュバック
される。



スマホを下ろした瞬間。

膝が、
力を失ったみたいに震える。

階段に座り込んで、
顔を伏せた。

……泣くつもりなんて、
なかったのに。

頬を伝うものを、
止められなかった。

私、ちゃんと頑張ってたよね……?

誰かのために、
無理して、合わせて。
それでも、駄目だった。



涙が全然止まらず溢れる。
わたしだけ、最悪の文化祭じゃんと
笑いたいのに笑えない。




「……夏奈?」


聞き覚えのある声に、
肩がびくっと跳ねる。

顔を上げると、
そこにいたのは――晃だった。

えっ!!
晃君!?
ヤダ……何か言い訳を考えないと。

全然思いつかない……。


夏奈
「晃君どしたの?」

晃君は、私の問いかけに答えた。

トイレを済ませて、
琴音ちゃんと千歌ちゃんのところへ
戻る途中だったらしい。


晃君は、私の赤い目を見て、
一瞬言葉を失っていた。
そりゃそうだよね……
自分の友達が、階段に座っていて
急に泣いているんだもん。



「……どうした。」

その声が、
優しすぎて。

張りつめていたものが、
一気に崩れた。

私は、
全部話してしまった。

彼氏のこと。
すれ違っていたこと。
別れ話の内容。

途中で何度も言葉が詰まって、
それでも晃君は、遮らずに聞いてくれた。




最後まで聞いたあと、
晃君は何も言わずに、
そっと私の頭に手を置いた。

優しく、ゆっくり。

ドキッと心臓が跳ねるのがわかった。

へっ……?
えっ……?

……あったかい。

妹みたいに、
守るみたいな手つき。


「……つらかったな。」

それだけで、
十分だった。