君の事好きになっても良いですか?






理央が教室に戻ってきたのは、
昼休憩がそろそろ終わりかける頃だった。

理央
「夏奈、交代する?」


トレーを持ったままの理央がそう言ってくれて、
私は少しだけ肩の力を抜いた。


夏奈
「うん、ありがとう。
「じゃ、休憩もらうね。」


理央がカウンターに立つのを確認して、
私はトレーを置いた。

そのタイミングで、
千歌ちゃんと琴音ちゃんと晃君が顔を揃えた。

千歌
「じゃあ私たち、他のクラス見てくるね。」

千歌ちゃんの声に、
琴音ちゃんも楽しそうに頷いている。


晃君もそれに続いて、軽く手を振った。


その背中を見送ってから、私は教室を出た。



*夏奈*


廊下に出ると、
文化祭特有のざわめきと、
焼きそばやたこ焼きの匂いが混ざっている。

今日は、
別のクラスの友達と
出店でお昼を食べる約束をしていた。

……はずだった。


出店の前で友達と合流して、
紙皿を手にベンチに座った瞬間。

ポケットの中のスマホが震えた。

画面に表示された名前を見て、
一瞬、指が止まる。

――前田さん。

バイト先の先輩。
大学1年生の、
私の彼氏。

珍しいな、昼に電話なんて。


夏奈
「みんなごめん。」
「ちょっと彼氏から電話きちゃったから」
「話してくる。」
「先、食べてどこか回ってて。」


夏奈の友達
「OKー!」
「じゃ、私達先食べて回ってるね。」

夏奈
「うん!」


友達にそう言って、
人の少ない階段の方へ向かう。



2年生の階段。

少しひんやりした空気の中で、
通話ボタンを押す。

夏奈
「もしもし?」

前田
『……夏奈、今大丈夫?』

声が、
やけに硬かった。

その時点で、
胸の奥が嫌な予感にざわつく。


夏奈
「うん。どうしたの?」


短い沈黙。

そして、
はっきりとした声。

前田
「正直に言うね。」
「俺、他に好きな人ができた。」


……ああ。

やっぱり……だと思った。

驚きよりも、
妙に納得してしまった自分がいた。

最近、
連絡は減っていたし、
会話も噛み合わなくて。

私が歩み寄ろうとすると、
向こうは一歩引いて。


それを、私は
”忙しいから”とか、
”大人の事情だから”って、
自分に言い聞かせてきた。


前田
「ごめん。」
「もう、ちゃんと向き合えない。」