次に入ったのは、
科学部の体験コーナー。
部員
「静電気で髪が浮くやつ、やってみます?」
部員に声をかけられ、
琴音は少し戸惑いながらも頷く。
装置に手を置いた瞬間、
琴音の髪がふわっと浮き上がる。
「わ……!」
「はは、可愛い!」
「見ないで!」
照れた琴音が、
思わず俺の袖を掴む。
周りの笑い声。
その中で、
二人だけの距離が、また縮まる。
……こういうのが、本当の文化祭なんだな。
俺は、
胸の奥がじんわり満たされて
いくのを感じていた。
──出店エリア
科学部の体験を終え外に出ると、
ソースの香りと、鉄板の音が広がる。
「琴音、たこ焼き空いてる。」
「行こ。」
並びながら
さっき教室での出来事を何気なく言う。
「……さっきさ……」
「ん?」
「人前でキスしたの、後悔してない?」
琴音は少し考えてから、
首を横に振った。
「びっくりはしたけど……」
「後悔なんてしてないよ。」
「今は、嬉しいよ。」
俺はその一言で、
胸の奥がぎゅっと締めつけられた。
守りたい……。
それだけが、
はっきりした感情だった。
たこ焼きを2人で分け合い、
ベンチに並んで座る。
「熱ッ!」
「ほら、言わんこっちゃない。」
琴音の口元をティッシュで拭う。
「……子ども扱いしないで///」
「恥ずかしいよ///。」
「してない。」
「可愛い扱いしてるだけ。」
私は何も言えなくなって、
ただたこ焼きを頬張った。
人の声、
音楽、
笑い声。
その全部が背景になって、
二人は並んでいる。
「……文化祭、来てよかった。」
琴音がぽつりと言う。
「琴音が来てれて良かった。」
理央は、
繋いだ手を見て、
静かに思った。
誰に何を言われても、この手は離さない。
文化祭の喧騒の中で、
二人の関係は、
少しずつ、でも確実に
“揺るがないもの”になっていった。
「理央、お昼休憩って何時まで?」
「もう、そろそろ戻らないとかな。」
「夏奈がまだ休憩取ってないから」
「変わってやからないと。」
「じゃそろそろ教室戻ろ。」
「そだな。」
私と理央はたこ焼きを食べ終え、
夏奈ちゃんの為に急いで教室に向かった。


