──理央・琴音
人波を縫うように歩きながら、
俺は琴音の手を離さなかった。
繋いだ指先から伝わる体温が、
”一緒にいる”という事実を、
何度も確かめさせてくる。
「次、どこ行く?」
「えっと……あ、あれが良いなぁ。」
琴音が指さしたのは、
廊下の先にある写真部の展示。
教室に入ると、
白い壁一面に並ぶ写真。
夕焼け、部活帰りの校舎、
笑顔の生徒たち。
「すごい……!」
琴音は一枚一枚、
足を止めて見ていく。
「こういうの、好きなの?」
「うん。」
「その時の一瞬を切り取ってる感じがして」
「写真の中でまだ続いてる気がするんだ。」
写真を丁寧に見る琴音の横顔を見る。
こういう顔、
俺しか知らない時間で見れてるの、
めちゃくちゃ嬉しいんだけど。
もう、ずっとこの時間を満喫したい。
「わぁ……これ!」
琴音が一枚の写真の前で立ち止まる。
文化祭準備中の風景。
笑っている誰かの後ろ姿。
「楽しそうだね!」
「本当だね。」
「でも今、俺らも楽しいだろ?」
琴音は一瞬、
理央を見てから小さく笑った。
「……うん。」
写真の展示を見終え展示を出た瞬間、
すれ違った男子たちの声が聞こえる。
その他男子
「マジで可愛い……」
その他男子
「理央の彼女だよな、あれ。」
その他男子
「勝ち目ないって。」
琴音は思わず、
俺の腕に少し近づく。
そして、
さりげなく歩幅を合わせた。
「気になる?」
「……ちょっと。」
「じゃあ、もっと近くに来て。」
そう言って、
指を絡め直す。
自分でとった行動とはいえ、
めちゃくちゃ心臓に悪いことをした
と思う。
心臓の音、鼓動がうるさく響く。


