晃
「“多少”のレベル超えてるけどな。」
そう言って、
晃は肘をついて、
少し楽しそうに二人を見る。
その横顔が、
やけに柔らかくて。
……あ、だめだ。
またキュンってしそう。
……晃君って、
こんな表情する人だったっけ。
琴音ちゃんの事ばかり追っかけてる
からあまり気付かなかったなぁ。
遥陽
「お待たせしました、」
「特製オムライスでございます。」
皿を置く時、
わざわざ千歌の目線に合わせて屈む。
千歌
「ありがとう、遥陽!」
名前を呼ばれただけで、
俺のの口元が緩む。
夏奈
「ちょっとー、執事さん?」
私が声をかけると、
遥陽は面倒そうに振り返った。
遥陽
「なに、夏奈。」
夏奈
「その距離感で、」
「他の客にもやるなら文句言わないけど?」
遥陽
「やらない。」
即答。
晃
「即答すぎだろ(笑)」
千歌ちゃんが、口に含んでる
飲み物を吹き出しそうになる。
夏奈
「ひどい(笑)」
遥陽は悪びれず、淡々と真顔で言う
遥陽
「だって千歌は特別だから。」
と言い切った。
とうとう遥陽、言い切っちゃった。
みんな青春してんだね。
教室のあちこちから、
「うわー」「出たー」
と小さなどよめき。
晃
「……ここ、告白会場だっけ?」
夏奈
「メイド・執事カフェですー。」
「私語とイチャつきは控えめでお願いしまーす。」
遥陽
「はーい。」
全然反省してない返事。
千歌ちゃんは頬を赤くしながらも、
どこか誇らしげだった。
私はトレーを置いて、
ふっと息をつく。
……文化祭、平和だな
少し前まで、
この教室には張りつめた空気があった。
でも今は、
笑い声があって、
軽口が飛び交って、
それぞれが“自分の場所”に戻っている。
晃が、
私の方を見て言った。
晃
「夏奈。……こういうのも、悪くないな。」
夏奈
「でしょ?」
私は自然に笑っていた。
その笑顔の裏で、
さっきの“キュン”を、
まだ胸の奥に残したまま。
……気のせい、だよね……。
そう言い聞かせながらも、
晃の名前を呼ばれた感覚だけが、
なかなか消えてくれなかった。


