晃
「……そっか。」
それだけ。
悔しさがないわけじゃない。
でも、
琴音の言葉を否定する理由はなかった。
晃
「なら、よかった。」
そう言って、
晃は少しだけ笑った。
晃
「無理してないなら、それでいい。」
その言葉には、
押しつけも、未練もない。
“尊重”だけが残っていた。
晃のその態度に、
理央は一瞬、言葉を失う。
……なんだよ、それ。
もっと噛みついてくると思っていた。
もっと、拗ねると思っていた。
なのに。
認めた、のか……?
胸の奥に、
安堵と同時に、
小さな焦りが生まれる。
晃は、簡単に消える存在じゃない。
でも………
琴音の手の温もりを感じて、
はっきり思う。
それでも、俺は琴音の彼氏なんだ。
だから――
逃げない……
隠れない……
堂々と、
琴音の恋人でいる。
その覚悟が、この一瞬でさらに強くなった。
教室の空気が少しずつ日常に戻り始めた頃。
遥陽
「なあ、理央。」
遥陽が、いつもの軽い口調で声をかけた。
遥陽
「そろそろ昼休憩だろ?」
俺が顔を上げると、
遥陽は顎で琴音の方を示す。
遥陽
「琴音ちゃんと、色々回ってきたら?」
その言葉には、
気遣いと、少しの後押しが混ざっていた。
夏奈も小さく笑って、
夏奈
「今行かないと、後で休憩できなくなるよ?」
と、背中を押す。
俺はは一瞬だけ迷ってから、
琴音を見る。
理央
「琴音……行く?」
琴音
「うん!行きたい!」
そう言って無邪気に笑う彼女。
迷いのない返事。
可愛いくて可愛いくて、たまらない。
理央は自然に琴音の手を取った。
手を繋いだまま、
二人は2年2組の教室を出て行く。
その背中を、
千歌と晃、夏奈と俺が見送る。
扉が閉まる直前、
俺はが小さく呟いた。
遥陽
「理央……やっと2人きりになれるな。」
人で溢れる廊下。
俺はさっきよりも少し強く、
琴音の手を握った。
「人多いな。」
「うん……。」
すると、
すぐ近くから小声が聞こえてくる。
その他男子
「……あの子、可愛すぎない?」
その他男子
「てか、田口の彼女?!マジで?」
その他男子
「声かけたかったんだけど……無理だろ。」
琴音は思わず、
きゅっと指に力を入れる。
「……聞こえちゃった。」
「わざと、琴音に……」
「聞こえるように言ってるな、あれ。」
理央は苦笑しながら、
視線を前に向けた。
今度は、反対側から。
その他女子
「理央くん、彼女いたのショック……」
その他女子
「正直、私の方が釣り合うと思うんだけど」
その他女子
「文化祭マジックじゃない?」
「だけど、やっぱり理央君かっこいいよね。」
そんな声が、
遠慮なく耳に入ってくる。
琴音は、不安そうに理央を見る。
「理央……ごめん。」
「何が?」
「周り、色々言ってる。」
「私、理央の隣りに歩いてて」
「変じゃないかな?」
理央は立ち止まり、
琴音の手を軽く引いた。
「全然変じゃない!」
「むしろその逆……。」
「琴音が可愛すぎて俺、隣りに連れてるの」
「結構自慢なんだ。」
「だから琴音は何も気にしなくていい。」
「理央、私……嬉しすぎて」
「死にそうだよ(笑)」
「俺が選んだのは、琴音だから」
「自信持ってね。」
私の胸が、
じんわり温かくなる。
いつもこうして、私の不安を
吹き飛ばしてくれる理央が
本当にかっこよくて私の自慢の
彼氏。
この先もずっと理央と一緒にいたいなぁ。


