君の事好きになっても良いですか?




琴音と理央の唇が離れた後も、
理央の腕は、琴音の腰に残ったままだった。



教室は静まり返り、
誰もが次の一瞬を待っている。



その沈黙を破ったのは――
俺だった。




「……琴音」

いつもと変わらない、落ち着いた声。


晃は一歩前に出て、
琴音の顔をまっすぐ見る。


「大丈夫か?」

ざわり、と空気が揺れる。

みんなの前で。
しかも、恋人同士のキスを見た直後で。
その言葉は、心配でもあり、
同時に――挑戦にも聞こえた。



嫌じゃなかったか……みんなのいる場面で。
怖くなかったか……突然のキスで。


聞きたいのは、それだけだった。


恋人としてじゃない。
“幼なじみ”としてでもない。

一人の人間として、琴音を気遣う言葉。


選ばれなかったからって、
気遣う資格まで失うわけじゃない。


俺の視線は真剣で、
逃げも、皮肉も、諦めもなかった。




琴音が言う前に俺が言った。

理央
「……大丈夫に決まってるだろ。」

低い声で一言放つ。


俺は晃を見る。
真っ直ぐ、逸らさず。


理央
「彼氏の俺がしたんだから」
「大丈夫だよ。」

一拍置いて、
さらに言葉を重ねる。


理央
「嫌なこと、」
「琴音にするわけないだろ。」



それは、
晃に向けた言葉であると同時に、
自分自身への宣言でもあった。


晃、頼むからこれ以上触れるな……踏み込むな。

晃の”大丈夫か?”という言葉に、
俺はは強く反応してしまった。

それは怒りだけじゃない。


もし、少しでも琴音が嫌だったのなら……
もし、琴音が無理してたら……



そんな“もしも”を、
想像したくなかった。


だから俺が、先に線を引く
守るための言葉。
奪われないための言葉。





理央と晃の視線が、同時に私の方へ向く。
私は一瞬だけ、自分の胸に手を当ててから、
静かに口を開いた。

琴音
「2人共。」
「……大丈夫だよ」

はっきりとした声で言う

琴音
「びっくりはしたけど……(笑)」


少しだけ頬が赤くなってるのが
自分でもわかる。
でも、視線は逸らさない。

琴音
「私……嫌じゃなかったから。」



教室が、
一瞬だけ息を呑む。



私の気持ちを、
誰かが決める必要はない。

晃の心配も、
理央の守る気持ちも、
どちらも嬉しかった。

でも――

私がどう感じたかは、私が言わなきゃ。


琴音は、
理央の腕にそっと手を添えた。


それは、
誰かを拒むためじゃなく、
自分の立場を示すための仕草。