理央の手が琴音の腰に回り
そのまま。
一瞬、
私の呼吸が止まる。
こっ……こんな理央……見たことない!
琴音
「りっ……理央!?」
名前を呼ぶ声は小さく、
けれど確かに揺れていた。
俺はは答えない。
ただ、
琴音の顎にそっと指を添えて、
顔を上げさせる。
視線が絡む。
驚きと戸惑いの奥に、
俺を信じている色があるのを、
理央は見逃さなかった。
潤んだ瞳が更に俺の欲望を悪化させる。
……大丈夫だ
そう自分に言い聞かせるように、
俺は一歩、距離を詰める。
そして――
ためらいなく、唇が触れた。
琴音
「……っふ!!」
短く、静かなキス。
それなのに、
教室中の空気が一斉に揺れる。
目の前で、
確かに“答え”を見せつけられた。
琴音が拒まないことも、
理央の迷いのなさも。
胸の奥が、
音を立てて崩れる。
もう……なんでこんな思いばかり
俺は経験しなきゃならない。
……やっぱり、俺じゃない。
それでも、
視線を逸らせなかった。
好きだから。
まだ、好きだから。
唇が離れた瞬間、
心臓が大きく跳ねる。
顔が熱い。
恥ずかしい。
みんなの視線が痛いほど
身体中に刺さる。
理央……どうしちゃったの?
でも――
理央の腕の中にいる安心感が、
全部を包み込んでしまった。
……私、理央の彼女なんだと
再確認する。
晃の視線が痛い。
それでも、
琴音は理央から離れなかった。
むしろ、
無意識に理央の服をぎゅっと掴んでいた。
一瞬、
教室の空気が固まったあと。
ざわ、と小さなどよめきが広がる中、
私は無意識に手元のトレーを握りしめていた。
夏奈
「うわっ……出た。」
「やっちゃったね……。」
ぽつりと零した声は、
呆れと納得が半分ずつ混ざっている。
隣で様子を見ていた遥陽は、
軽く肩をすくめた。
遥陽
「理央、完全にスイッチ入ったな。」
「大胆過ぎてある意味その度胸に」
「尊敬するわ。」
夏奈
「うん(笑)」
「しかもあれ、文化祭テンションどころ」
「の話しじゃなくなってる。」
私の視線は、
理央の腕の中にいる琴音ちゃんと、
その少し後ろで立ち尽くす晃君を見ていた。
夏奈
「ねぇ、遥陽。」
「……晃くんが、先に距離詰めたでしょ?」
遥陽
「肩に手、置いてたやつ?」
夏奈
「そう。」
「あれ見た瞬間の理央の顔、ヤバかったもん。」
遥陽は苦笑する。
遥陽
「そりゃそうだろ。」
「自分の彼女に、あんな堂々と触られたら……」
少し間が空く。
夏奈は小さく息を吐いて、
声を落とした。
夏奈
「でもさ……」
「琴音ちゃん、逃げなかった。」
遥陽の表情が、少しだけ真剣になる。
遥陽
「ああ。」
「拒んでないし、むしろ……」
遥陽・夏奈
「理央から離れなかった。」
二人の言葉が、重なる。
夏奈
「……これで、はっきり晃君は」
「わかったんじゃないかな……。」
夏奈が言うと、
遥陽は静かに頷いた。
遥陽
「晃にはキツいけどな。」
夏奈
「うん……」
夏奈は一瞬、目を伏せる。
夏奈
「でも、理央も必死なんだよ。」
「ああやってしか、」
「自分の気持ち守れなかったんだと思う。」
遥陽
「守るってより、」
「”奪わせない”って顔だったけどな。」
と、少しだけ冗談めかして言う。
夏奈は苦笑しながらも、
真剣な声で続けた。
夏奈
「三角関係ってさ、」
「誰かが動いた瞬間、」
「誰かが傷つくんだよね。」
遥陽
「……だな。」
「俺、三角関係にならなくて良かったわ(笑)」


