*理央*
──夜。
部屋の明かりを落とし、理央はベッドに腰を下ろしていた。
琴音との通話が終わってから、
もうだいぶ時間が経っているはずなのに、
頭の中はまだ、さっきの声でいっぱいだった。
”ちゃんと断ったよ。”
”私、彼氏がいる。”
そう、琴音は晃の両親にキッパリと言った。
信じている。
疑ってはいない。
それでも。
……晃、か。
天井を見つめたまま、
理央は小さく息を吐いた。
俺は知っている、晃の性格を…。
真っ直ぐで、不器用で、
感情を隠すのが下手なやつ。
だからこそ――
分かってしまう。
あいつ、終わってない……
諦めたふりをしても、
距離を取ろうとしても、
本当は、まだ琴音のそばにいたいはずだ。
理央は、胸の奥がじわりと痛むのを感じた。
それは、嫉妬だけじゃない。
不安だけでもない。
……怖いんだ。
自分が知らない時間。
自分が立ち入れない場所。
“幼なじみ”という関係が、
どうしても埋められない距離として、
そこにある。
理央は拳を握りしめる。
だけど…
琴音は、ちゃんと選んでくれた。
あの子は、
迷いながらも、
言葉を選びながらも、
いつも誠実に向き合ってくれている。
それが1番…
何よりの答えだった。
それでも、
感情は理屈通りには動かない。
もし――
晃が距離を詰めてきたら?
もし――
琴音が、揺らいだら?
考えただけで、
喉の奥が苦くなるし、逃げたい気持ちに
もなる。
奪われるかもしれない、なんて
弱音を吐いてしまう。
そんなふうに思う自分が、
情けなくもあった。
理央は、目を閉じる。
俺は、どうしたい…。
縛りたいわけじゃない。
疑いたいわけでもない。
ただ――
選ばれ続けたい。
それだけだ。


