君の事好きになっても良いですか?



篠崎家 ――夜



リビングには、俺と両親の三人。

テレビはついているが、
誰も見ていない。


「晃、さっきの話だけど……」

沈黙を破ったのは、父さんだった。


「琴音ちゃん、いい子だよな。」
「しかも可愛くなっててびっくりした。」


「ほんとにね」
「昔から優しくて、気が利いて」
「小さい頃からあの子モテてたわよ。」


晃は黙ったまま、
視線を床に落としている。

「晃……」

母の声に、肩が少し揺れる。


「どう思ってるの?」
「琴音ちゃんのこと。」
「まぁ、あんたの態度見てたら」
「丸わかりだけど(笑)」


その問いは、
ずっと避けてきたものだった。

晃は、ゆっくりと息を吸う。


「母さん、聞かなくても分かってんだろ?」
「……好きだよ……琴音の事。」


喉が乾いて声は低く、
かすれていた。


「昔から小学生の時から。」
「多分……自分が思ってるより、ずっと前から」
「だと思う。」


両親は、黙って聞いている。


「理央が彼氏なのも知ってる。」
「もう俺の居場所がないことも分かってる。」
「俺、琴音に告白してフラれてるから。」

それでも――
言葉が止まらなかった。



「でもさ……」
「どうしようもないんだよ。」

拳を握りしめる。

「忘れようとしても、」
「距離取ろうとしても、」
「好きって気持ちだけ、消えてくれない。」

声が、震える。

「俺……今日も」
「いっぱい苦しくて苦して胸が痛い。」

俺の悲痛な話しに
母が、そっと言った。

「……晃。」
「琴音ちゃんの事をそこまで……。」

「分かってる……」
「奪っちゃいけないし」
「壊しちゃいけない。」


顔を上げた晃の目は、
赤く潤んでいた。


「でも……」
「どうしようもないくらい好きなんだ。」

沈黙が落ちる。

しばらくして、父が静かに口を開いた。


「それだけ真剣なら」
「無理に、なかったことにするな」
「無理に距離を置くような事はするな。」
「後悔するぞ。」


「……父さん。」

「ただし……」
「自分で壊すような真似はするな。」

母も父さんの隣りで頷く。

「晃いい?」
「誰かを大事に思える気持ちは」
「間違いじゃない。」
「でも、」
「晃が一番守らなきゃいけないのは、自分よ。」
「自分がどうしたいかだよ。」


晃は、唇を噛みしめながら、
小さく頷いた。

「……うん。」


好きだ……だから俺はこの想いを大切に
したい。