──誕生日会のお開き
食後のケーキも終わり、
テーブルの上が少しずつ片付けられていく。
晃母
「今日はありがとう」
「毎年悪いわねぇ。」
母さんと琴音のお母さんは、
名残惜しそうに笑い合う。
琴音母
「また、遊びに行かせてもらうわ。」
「それじゃあ琴音、私達」
「そろそろ帰りましょう。」
琴音のお母さんがそう言うと、
琴音は立ち上がり、深く頭を下げた。
琴音
「今日は本当におめでとうございました。」
「楽しかったです。」
「ご飯ご馳走様でした。」
「美味しかったです。」
晃母
「琴音ちゃん。」
「こちらこそ、来てくれてありがとう」
「気をつけて帰ってね。」
晃父
「琴音ちゃん、飽きずに」
「晃をよろしく頼むよ。」
琴音
「もちろんです。」
玄関で靴を履きながら、
私は一瞬だけ晃を見る。
琴音
「じゃあ……またね。」
晃
「……うん。」
俺はそれ以上、何も言えなかった。
扉が閉まる音が、
やけに大きく響いた。
夜風が、少し冷たい。
私はお母さんと一緒に自分達の最寄り駅まで
着いて家までの距離を歩きながら、
琴音は今日の出来事を思い返す。
あんなこと、
言われるとは思わなかったな……。
「お母さん!」
「私、今から理央に電話するから」
「部屋入って来ないでね。」
私は家に着くなりお母さんに吐き捨て、
靴も揃えないまま自室に入り、
ベッドに腰を下ろす。
スマホを手に取り、
迷わず通話ボタンを押した。
「……もしもし理央?」
「琴音?」
すぐに聞こえた声に、
胸がほっと緩む。
「今、帰ってきたよ。」
「おかえり」
「どうだった?」
「うんとね……色々あった。」
少しだけ間を置いてから、
私は正直に話し始めた。
「誕生日会でね」
「晃のご両親に、」
「将来、晃の
「お嫁さんにならない?って言われた。」
「私が、彼氏いるって事知らなかった」
「みたい。」
電話の向こうが、静かになる。
「……そうなんだ。」
「私、彼氏がいますって言った。」
「てか、晃とはそんな事一度も」
「思った事ないから、びっくりしちゃった。」
その言葉を口にした瞬間、
自分の声が、
驚くほどはっきりしていることに気づく。
「……ありがとう。」
俺の声は、少しだけ震えていた。
晃の花嫁が琴音か……。
そりゃ、晃の親はそう願いたいだろうなぁ。
小さい頃から知っていて、家族ぐるみの
付き合いなんだし……琴音可愛いし。
それに、晃の親は知らなかったんだから……
琴音が俺と付き合ってる事を。
悪気がないから責められない。
「正直、聞くの怖かったけど」
「でも……ちゃんと話してくれて嬉しい。」
「隠したくなかったし、」
「理央には私がどんな事あったのか」
「知ってほしいから。」
「うん、わかってるよ。」
「……琴音。」
「なに?」
「俺、信じてるよ、」
「琴音の気持ちも、」
「俺たちの関係も。」
その一言で、
胸の奥がじんと熱くなる。
「私も……信じてる。」
「今日は、ちゃんと休んでね。」
「うん、理央もね。」
電話を切ったあと、
私はスマホを胸に抱えた。


