君の事好きになっても良いですか?


*理央*

俺の部屋壁に時計の針が、
ゆっくりと夕方に近づいていく。
俺ははスマホを手に持ったまま、
何度目か分からないため息をついた。


はぁ……
琴音、まだ終わらないよな……。

今日は琴音が朝から夕方まで
バイトだと知っている。
分かっているのに、
落ち着かない。

俺、こんなに気にするタイプだっけ?

自分でも意外だった。
付き合う前は、
もっと余裕があるつもりだったのに。


恋人になった途端、
琴音が自分の知らない場所にいる時間が、
こんなにも気になるなんて思っていなかった。


バイト先、男多いのかな……。
夏奈に聞いとけば良かった……。


すぐにその考えを打ち消す。


違うだろ。信じてるだろ。


琴音は、誰にでも愛想がいい。
優しくて、真面目で、頼られるタイプだ。

そして、天然だからな……。


だからこそ、心配になるんだよなぁ。


理央は苦笑する。

俺だけが特別って、
ちゃんと分かってるはずなのに……

それでも、頭の片隅に浮かんでしまう。
知らない男の子に話しかけられて、
笑っている琴音の姿。


……やめろ。


胸の奥が、じわっと熱くなる。



取られるわけないだろ。

自分に言い聞かせるように、
理央は立ち上がった。



俺は、部屋を行ったり来たりする。
落ち着かない……。

いてもたってもいられない。

会いに行くだけだ。
顔見て、終わったら一緒に夜ご飯たべて
帰るだけ。



それだけのはずなのに、



支度を爆走で済ませて
家を飛び出した足取りは少し早くなっていた。




──店の前

スマイリーバーガーの看板が見えた瞬間、
理央は一度、足を止めた。


客として来ただけ……。

ガラス越しに店内を覗くと、
カウンターの向こうに、
見慣れた横顔があった。

スイルバーガーの制服姿の琴音。
やばい……可愛い……写真撮りたい。

真剣な表情で接客をして、
次の瞬間、隣の男の子に何かを説明している。


……あの男の子誰?
……新人?
……それとも先輩?


男の子は、やけに距離が近い。
無邪気に笑って、琴音を見上げている。

胸の奥が、きゅっと締めつけられた。


ああ、そっか……

こういう気持ちか……

嫉妬だ……。

はっきりと、そうだと分かった。

別に何も起きてない。分かってる。
仕事中だし……。

でも、嫌だ……。

自分でも子どもみたいだと思う。
それでも、どうしようもなかった。

琴音が、俺の知らない誰かに
あんな顔向けるのは嫌だ。


一瞬だけ、店に入るのをためらう。

……でも。


理央は深く息を吸って、ドアに手をかけた。

俺は、琴音の彼氏だ。

ちゃんと、信じる。


それに――


独り占めしたいって思うくらい、
好きになったんだよな。
もう、琴音の沼にとことんハマろうと
思う。

ドアベルが鳴る。


いらっしゃいませーと店員の
声が響いた。


俺は、店内に入って
いつもより少しだけ強い視線で、
カウンターの向こうの琴音を見つめた。



理央 side 終わり