君の事好きになっても良いですか?



少し間を置いてから
俺は今度、少しだけ声のトーンを落とす。



「琴音……先輩の彼氏さんって、
「神谷崎高ですよね?」


琴音先輩は一瞬、手を止める。


可愛い……。



「うん、そうだけど…。」

「やっぱり。」
「学校の噂で聞きました。」



えっ?
なんでそんな事聞いてくるの?
って私、学校で噂になってんの!?
私が話しに追いついてないのに、

矢口君は変に踏み込む様子もなく、
あっさりと言葉を続ける。

「琴音、先輩1年の男女の間では」
「有名ですよ。」
「俺、前教室の窓から琴音先輩見たんです。」
「グランドで体育の授業受けてる先輩。」
「でも、近くで実際見ると」
「琴音先輩、噂以上に可愛くて」
「びっくりしました!」



「ちょ、ちょっと…//////。」


なに、この直球素直系は……
私の周りに居ないタイプで、
扱いに困るよ。


私は困ったように笑いながら、視線を逸らした。



この子、本当に遠慮がないな…。




ハンバーガーを食べ終えて
紙袋を片付け少しだけ沈黙が流れた後、
俺は珍しく視線を落としたまま、指先を組んだ。



「……琴音先輩。」



呼び方が、さっきより少しだけ真剣なのが
わかったのか琴音先輩は顔を上げた。


「どうしたの?」



「俺、先輩のこと……好きです。」



私の身体が一瞬、
時間が止まったように感じた。


「え……?」



もう、今日この子ペースに踊らせてる
ようで不安になる。
良い子なんだけど……。



「彼氏さんいるの、ちゃんと分かってます。」


矢口君は慌てる様子もなく、
まっすぐ言葉を続ける。

「でも、好きになるのは」
「自由じゃないですか。」
「付き合ってほしいとか、」
「今すぐ何かしてほしいとか、」
「そういうのじゃないので」
「安心してください。」


まっ……待って!
全然わかんない!


「ただ、好きって気持ちは伝えたくて。」



”……好き、って……。”



私は一度視線を落とし、
心の中で言葉を整理する。


びっくりしたけど……この子、まだ1年生だし
きっと“先輩として好き”とか、“憧れ”とか、
そういう意味だよね。

そうじゃないとおかしいもん。
今日まで全然接点もなかったんだから。

そう自分に言い聞かせるように、結論を出す。


「……ありがとう。」

琴音は、やわらかく笑った。

「でも、私は彼氏がいるからね。」

「はい。分かってます。」


矢口君は少し照れたように笑う。


「だから大丈夫です。」
「ライクでも、好きは好きですし。」



その言葉に、琴音は心の中で小さく頷いた。



やっぱり。ライクの“好き”だよね

「瑠斗くんは、可愛い後輩だよ。」

「それで十分です。」

明るく返す矢口君の笑顔を見て、
琴音の中の緊張はゆっくりほどけていった。


変に意識する必要ないよね。



そう思いながら、琴音は休憩終了の時間を確認した。