君の事好きになっても良いですか?


──レジカウンター

「まずはレジの横について。」
「注文の流れ見るだけでいいから。」

「はいっ!」

矢口君はとにかく前向きで、
メモを取る手も真剣だ。


「ここはポテトの補充。」
「火傷しやすいから気をつけてね。」


「先輩、声も優しいし」
「説明めっちゃ分かりやすいです!」

矢口君は目を輝かせながら、
私にそう言ってきた。


「そ、そう?ありがとう。」

夏奈ちゃんも、最初私にこんな感じだった
のかなぁっと、後輩が初めてできて感じた。

ただ私は、
褒められることに慣れていない。
最近は、理央がよく褒めてくれるから
少しだけど褒められる事に免疫はついて
はきているのかなとは思うけど、
まだまだだなぁ……。

少し照れながらも淡々と教え続けた。


元気でいい子だな…可愛い後輩、って感じ。


私にとって、
矢口君はそれ以上でもそれ以下でもなかった。




「琴音ちゃん、矢口君休憩時間だよ!」


「夏奈ちゃん!」
「お疲れー!」
「キッチン側忙しそうだね。」



「もう、大変だよ。」
「今日、アボカドレモンソースバーガー」
「結構注文出てない?」


「出てる。」
「さっきも5組連続、アボレモンバーガー」
「セットだったし。」


「俺、去年の今頃アボレモンバーガー」
「食べたけど、すげぇ美味しかったですよ!」
「毎年、期間限定だから、ファンは」
「必ず食べに来ますからね。」


「矢口君詳しいね(笑)」


「市川先輩、俺密かにここの」
「ハンバーガーのファンなんです(笑)」


「やっぱり?(笑)」
「って、ごめんごめん!
「2人とも休憩時間!」」


「夏奈ちゃん休憩行ってくる。」


「行ってらっしゃい。」




昼休憩

私は昼食のチーズハンバーガーセットを
持って、スタッフルームに移動する為に
歩いていた。

「琴音先輩、一緒に休憩行っていいですか?」

矢口君は私の後ろを歩きながら
言ってきた。

あれ?
”小川先輩”から”琴音先輩”に
呼び方が変わってる。
まぁ、いいっか別に呼び方は人それぞれだし。
私は特に気にせず、呼び方が変わった事は
スルーした。

「うん、いいよ。」

スタッフルームに並んで座り、
紙袋からバーガーを取り出す。
エアコンの音と、
店内のざわめきが少し遠くに感じられた。

私はチーズハンバーガーを頬張る。
矢口君はトマトレタスバーガーを頬張って
いた。

最初に口を開いたのは矢口君だった。


「そういえば琴音先輩。」

瑠斗がストローを回しながら、
何気ない口調で言う。

「琴音先輩って、白鷺高校ですよね?」

琴音は少し驚いて口に含んでいた
コーラーが口から出そうになるのを
必死にこらえて顔を上げた。

なっ!何!?
急な質問すぎない!?
びっくりした……

ってかなんで私が白鷺高って矢口君、
知ってるの?

全然この子の考えてる事が見えない……。


「え、うん。そうだけど…」

「やっぱり!俺もなんですよ!」
「俺、1年なんで学校でも後輩ですね。」

「そうだったんだ。」
「全然気づかなかった。」


そう言って私は、愛想笑いをする。


「ですよね。俺、」
「学校じゃあんまり目立たたないように」
「してるんで。」



そう言って笑う矢口君は、
どこか嬉しそうだった。