──夜
部屋の電気もつけず、
ベッドに仰向けになったまま、
俺はスマホを天井にかざしていた。
画面には、少し前に鳴った不在着信。
――田口 理央。
……分かってた。
今頃、琴音はもう家に帰って、
理央は一人になって――
それで、かけ直してきたんだろうって。
震える指で、通話ボタンを押した。
「……もしもし。」
「晃? 今、大丈夫か。」
いつもと同じ声。
なのに、どこか落ち着いてて、
……少しだけ、大人びて聞こえた。
「うん平気。」
短く答えた俺に、少し間が空く。
「さっきは、出られなくてごめん。」
「……気にすんな」
「どうせ、分かってたから。」
そう言うと、理央は小さく息を吐いた。
「……琴音、無事に帰った。」
その一言で、胸の奥がきゅっと締まる。
「……そっか。」
それ以上、言葉が出てこなかった。
しばらく沈黙。
でも、切れる気配はなくて、
理央が話し出すのを、ただ待った。
「なぁ、晃。」
名前を呼ばれて、少し身構える。
「今日な、」
「……琴音と、ちゃんと話した。」
「……うん。」
「俺さ、」
「今まで以上に、思ったんだ。」
その続きが、
言われる前から分かってしまって、
無意識に、歯を食いしばった。
「俺、琴音のことが本当に好きだ。」
……知ってる。
知ってるけど。
「琴音を守りたいし、」
「大事にしたい。」
「中途半端な気持ちじゃない。」
まっすぐで、逃げない声。
「……そうか。」
そんなのとっくにわかってた。
絞り出すみたいに、答えた。


