昇降口で靴を履き替えながら、
胸がきゅっと締め付けられる。
今日は初めてのお家デート。
嬉しいはずなのに、緊張で心臓がうるさい。
「琴音ちゃん、顔赤いよ?」
隣で千歌ちゃんがクスクス笑う。
「そ、そう?」
「理央君の事考えてたでしょ(笑)」
図星すぎて、言葉に詰まる。
千歌ちゃん鋭すぎだよ……。
「理央……迎え、来てくれるんだよね」
「当たり前じゃん。彼氏だよ?」
「何、心配してんの。」
千歌ちゃんの言葉に、少しだけ勇気が湧く。
校門へ向かう途中、
ふと視界に入ったのは――
フェンスのそばに立つ、
見慣れた後ろ姿。
「……理央君」
その瞬間、
胸が一気にあたたかくなる。
琴音と千歌のやり取りをそ少し後ろで
聞いていた俺はその光景を静かに見ていた。
*晃*
……やっぱり、理央が迎えに来てる。
琴音が一瞬で表情を柔らかくして、
迷いなく彼の方へ向かう姿。
もう、俺の居場所は……
分かってる。
分かってるのに、胸の奥がずきっと痛む。
でも、目を逸らすのは違う。
俺は、まだ――琴音が好きだから。
だけど俺はもう、琴音にフラれていて、
幼なじみのまま……。
だから、何も出来ない自分に腹が立つ。
”行くな”って言いたい。
だけど言えないこの感情をどこに、
ぶつけて良いのか分からず、
その場にただ立っている事しかできなかった。
晃 side 終わり
「琴音!」
「理央、来てくれてありがとう!」
「ねぇねぇ!」
千歌ちゃんが私の肩を叩き、耳元で
囁く。
「理央君とのお家デート楽しんできてね♪」
「結構、彼氏の家はドキドキだよ。」
「う……うん///。」
琴音が恥ずかしそうに頷く。
その時、俺は一歩前に出る。
「……琴音」
「なに、晃?」
一瞬だけ言葉に迷ったあと、
晃は小さく笑った。
「楽しんで来い……よ。」
「ありがとう!晃!」
晃は苦痛の顔を浮かばせながら、
琴音に言ったのだと俺は思った。
晃……ごめん、俺が彼氏なんだ。
彼氏の特権なんだ。
「行こう、琴音」
「……うん」
その瞬間、俺は視線を伏せた。
まだ、好きだ!
でも――それでも
背中越しに、俺は千歌と二人で
琴音を見送った。


