君の事好きになっても良いですか?


理央君……完全に彼氏って顔してる。

私は、心配になりアキ君をチラッと
見る。

アキ君は、少しだけ視線を落としてから
いつもの穏やかな表情に戻った。

切ないけれど琴音ちゃんが
今幸せなら良い……。



私達はこの後もカラオケでいっぱい、
歌ってはしゃいで、盛り上がった。

琴音ちゃんの歌は、この日のる一番強く残る
記憶になった。

カラオケ編 終わり。






〇お家デート編〇


*理央*

俺の通う高校、神谷崎高は二学期が始まって
3日目の今日も無事に全ての授業が終わった。
昨日はみんなでカラオケで遊んで、
琴音は歌がものすごく上手だと、
知った。

こうして、彼氏になって色んな琴音を
知っていける事が俺にとって一番幸せを
感じている。

今日は琴音が俺の家に遊びに来る日。
めっちゃくちゃ緊張で今日の授業は
全然頭に入らなくずっと上の空状態で、
生物科の先生に怒られた。



「やっと終わった~!」


椅子に深くも垂れかかりながら、
遥陽が天井を見上げた。

その横で、夏奈がきちんと教科書を
揃えながら俺の方をチラッと見た。


「理央~、今日白鷺高だっけ?」


「うん。」
「そのまま、琴音を迎えに行って」
「そのまま俺ん家。」


俺は、少し照れているような表情で
答えた。
夏奈はそんな俺を見て、クスッと笑った。



「本当、理央は相変わらずわかりやすい」
「顔をしてるよね。」
「本当に琴音ちゃんの事大好きなんだね。」


「なにそれ、悪い(笑)?」


「悪くない。むしろ安心するんだよ♪」


遥陽も頷きながら言う。



「付き合ってからも、」
「ちゃんと大事にしてるの分かるし。」
「琴音ちゃん、幸せだと思うなぁ。」



その言葉に、俺の胸の奥が少しだけ
あたたかくなる。
同時に、ふと晃の顔が脳裏をよぎった。


───晃は、今も琴音の事が…………



俺は何も言わず、視線を下に向けた。
夏奈はそれに気付いたのか、
声を少し柔らかくした。


「理央、もしかして」
「晃君の事気にしてる?」


「うん……そうだな。」
「気にしてないと言ったら嘘になる。」



「理央、でもね」
「琴音ちゃんが選んだのは理央だよ。」
「そこはちゃんと自信を持った方が」
「いいよ!」


夏奈は、ハッキリとした口調で言った。
一番胸に刺さる言葉だ。

「ありがとう……琴音。」
「お前が言うと説得力がある。」



「どういたしまして♪」
「理央、そろそろ行かないと」
「琴音ちゃんを待たせてしまうよ?」



「ヤバい、急がないと!」



「じゃ、行ってらっしゃい。」
「初のお家デート、変なことすんなよ?」

遥陽の茶化す声に、俺は苦笑した。


「しないから(笑)」



そう言って、白鷺高校へ向かう電車に乗った。





俺は白鷺駅を降り、白鷺高校の校門へ
向かう道を歩きながら何度もスマホの
画面を確認した。

時刻は放課後
校門前には白鷺高校の制服を着た生徒達が、
次々と出てくる。



琴音……まだかな。



俺は白鷺駅を着いてすぐに、
琴音にtalkメッセージを入れた。

”もう少ししたら着くよ”と。


胸がそわそわして落ち着かない。
彼女の学校前で彼女を待つ時間さえも、
今の俺には特別だった。



校門脇のフェンスにもたれ、
琴音の姿を探していると――



「ねぇ、君!」



不意にかけられた声に顔を上げる。
そこには、白鷺高の女子生徒が二人。
少し距離が近い。

「神谷崎高だよね? 迎え?それとも暇?」
「かっこいいね!」
「よかったら一緒にお茶しない?」

軽い笑顔。
でも、今の俺には迷う理由なんて一つもなかった。



「悪いけど……」

声のトーンを一段落とし、はっきりと言う。

「俺、ここにいる小川琴音の彼氏だから」

一瞬、空気が止まった。
彼女達は数秒固まって動かない。

「……え」
「彼氏……?」


「ナンパとか、そういうの興味ないから。」


冷たいと言われてもいい。
琴音以外を見るつもりは、最初からない。

女子生徒たちは気まずそうに視線を逸らし、
「ごめん……」
と小さく言って、その場を離れていった。

俺はふっと息を吐き、
再び校門へ視線を戻し、琴音が来るのを待った。



理央 side 終わり