君の事好きになっても良いですか



〇カラオケ編〇

9月に入ったばかりの空は、
まだ少しだけ夏の名残りが含んでいた。
白鷺高校の校門を出ると、
私は千歌ちゃんと晃と並んで
歩き出した。


「2学期が始まったて感じが」
「しないねー。」

千歌ちゃんが大きく背伸びを
しながら言う。


「本当それ。」
「まだ、私の体は夏休み感覚だもん(笑)。」

その時、私の隣りを歩く晃がさりげなく
私のスクールバッグの持ち手に指を
引っ掛ける。


「重そうだな。」
「少し持ってやるよ。」



「晃、ありがとう。」


晃が私のスクールバッグを手に掛けた
時、晃の指先が私の手に少し触れた。




あ……まただ。

私は、アキ君と琴音ちゃんの様子を
見て胸がざわついた。

アキ君が琴音ちゃんにスキンシップを
取るのはあからさまじゃない。
でも、近くにいる私ならわかる。
知ってる人にだけ分かる距離感だ。


アキ君はまだ、琴音ちゃんの事好きで
諦められてないんだ……。

琴音ちゃんは理央君と付き合ってる。
それはみんなが知っている事実。
もちろん、アキ君も知っている。

でも、それでもアキ君は小さい頃から
ずっと、琴音ちゃんの事を想ってきた
訳だからそりゃー簡単に忘れられる
事も出来ないよね……。

琴音ちゃんは、理央君と付き合った
後、まだアキ君が想いを寄せてるなんて
気付いてないよね……
あの様子だと……
琴音ちゃん、鈍感だからなぁ……。

私は小さなため息を吐く。


私は何も言わず、ただ2人の間に
流れる空気を感じ取っていた。



「千歌、お前大丈夫か?」



「千歌ちゃん、なんか悩み事?」


「えっ!?」
「なんで!?」



「いや、だって千歌さっき」
「ため息吐いてただろ。」


「千歌ちゃんがため息なんて」
「珍しいからね。」


「ちょっとね(笑)」
「遥陽君の事が好きすぎて」
「ため息が出ちゃっただけだよ(笑)」

遥陽、ごめん!
咄嗟に誤魔化す為に名前借りちゃった。
”好きすぎるのは本当だからね”っと
心の中で思って2人に笑顔を見せる。


「琴音、千歌が惚気けてる。」


「うん(笑)」
「これは大いに惚気けてますなぁー♪」
「そんな千歌ちゃんには、私から」
「罰ゲーム♪」
「おりゃーー!」

そう言って琴音ちゃんは
私の腰横をこそばせてくる。


「キャハハ!」
「琴音ちゃんやめて!」
「こしょばいよぉー(笑)」


「えいっ!」



「キャハハハハ!」
「マジでストップ!」
「琴音ちゃん……キャハハ!」
「ごめん!ごめんってば(笑)」

私が、謝ると琴音ちゃんは
ピタリと手を止めた。

「ああ、楽しかった♪」


「琴音ちゃんって、」
「不意打ちに、大胆な事してくるよね。」



「千歌、琴音がたまに大胆な事」
「してくるのは今始まった事じゃないだろ。」



「確かに(笑)」



「琴音ちゃん、ドヤ顔だし(笑)」


なんか、久しぶりこうして3人で
ふざけあって歩いてるの。
私、琴音ちゃんもアキ君も大切な
親友だから2人とも良い関係で
続いて欲しいなぁっと私は密かに
心で思いながら、3人で待ち合わせ場所の
大和駅のロータリーまで向かった。