君の事好きになっても良いですか?


*琴音*

玄関のドアを閉めた瞬間、
張り詰めた気持ちが、ふっと解けた。


「ただいまー。」


誰も居ない家にそう言って靴を脱ぐ。

今日もお母さんは、夜勤。
明日お母さんお休みだから、
初彼氏が出来た事伝えよ……
その相手は理央だって言いたくてたまらない。


はぁ……

まだ胸が全然落ち着かない……

時計台の下。
夕暮れの中で、触れた唇。
呼び捨てで呼ばれた私の名前。

”……理央”

声に出さずに呼んだ
だけなのに、こんなにも胸がきゅーっと
苦しくなる。

お出かけ用の服を脱いで、
部屋着に着替える。
そして、そのままベッドに腰を下ろし
スマホを確認する。

理央からtalkメッセージきてる
かな?

通知は来てない。


「そりゃ、そんな都合良く」
「来ないよね。」


そう言いながらも、
スマホの画面を見てしまう自分が可笑しい。


私は、枕に顔を埋めると
胸の奥からじんわり幸せが広がった。


「私、初めてキスしちゃったんだ。」

誰にも聞こえない声で枕越しで
呟く。
恥ずかしくて、嬉しくて何とも言えない
感情で……。


夏休み──
彼氏、彼女になってまだ数日。
それなのに、世界が少し違って見える。

「また早く会いたいなぁ。」


そう思いながら、
私はしばらく余韻の中で動けずにいた。


琴音 side 終わり