*晃*
夕方の公園は、意外と静かだった。
遊んでいた子供達の声も少なくなり、
風に揺れる木の葉の音がやけに大きく
聴こえてくる。
俺の足が勝手に公園に向かっていた。
理由なんて分からない。
分かっていたのなら、きっと来なかった。
俺は後悔した。
時計台の下にベンチがある。
そこに……居た。
理央と琴音が……。
2人は並んで座っていて、
夕焼けを背に、影だけが重なって見える。
”見るな!”
そう思った瞬間、気持ちと行動が
一致せず視線が離せなくなる。
理央が何かを言ってる。
琴音が、頷いているように見える。
次の瞬間、
2人の距離がよりゆっくりと縮まる。
はっきりとは見えない……
でも、わかってしまう。
──あれは、キスだと。
2人のシルエットが、
ひとつに重なる。
それだけで胸の奥がぎゅっと潰された。
”もうこれ見てしまったら、”
”終わりだろう”
頭では、何度もそう言ってるのに……
でも心は全然納得していない。
小学校の帰り道、
琴音が俺の裾を掴んで離さなかった
あの頃。
当たり前のように俺を追っかけていたのに。
中学の2年の秋、琴音は俺に手紙を
渡してきた時、やっと俺の気持ちが
伝わったと一瞬舞い上がったら、
クラスの女子から渡して欲しいとお願い
されたのだと言われ、
それでも俺は琴音のそう言う鈍感なところも
含めて、好きで。
それ以外も含めて、その全部が
自分の中でまだ生きてる。
”忘れろよ”
声にならない声で何度も心で呟く。
それでもまだ、しつこく残って
目が離せない。
琴音の笑顔、仕草
それがあまりにも見慣れていて
愛おしい。
”大好きなんだ”
今更認めるまでもない。
どんなに時間が経ってようが
他の奴と隣り並んでいようが
好きでたまらなくなる。
諦めようとした。
忘れようともした。
でも、心だけ置いていけなかった。
拳を強く握りしめる。
俺の想いは届かなかった。
それが現実だ……。
それでも───
それでもまだ……好きでしょうがない。
俺はそっと視線を違う方向に向けた。
これ以上見たら、心が壊れてしまいそう
だったから。
背を向けても、2人のシルエットが
瞼の裏に焼き付いて、
あ忘れられない。
諦められない。
琴音、理央ごめん……俺まだ
この恋……終われそうにない。
晃 side 終わり


