食事を終えて外に出ると、
昼間の暑さが和らいでいた。
私と理央君は、レストランから
徒歩2分の所にある、広い公園へと
向かった。
そこには大きな時計台の影が
長く地面に伸びている。
私と理央君は公園に着くと、
時計台の下のベンチに腰を下ろす。
カチ、カチ、と時計の音が静かに
響き渡っている。
夕方の空は、オレンジ色と薄紫色が
混ざり合って綺麗な色で包まれている
中、私はポツリと言った。
「今日、めちゃくちゃ楽しかったなぁ。」
「付き合って、初めてちゃんと」
「一緒に過ごせて。」
「俺もだよ。」
そう言って理央君は覗き込んで、
私に言ってくる。
「俺、ずっと緊張してたけど」
「離れたくないって思ってる。」
言葉に出したら心が熱くなる。
俺はそのまま琴音ちゃんを、
見つめて……
「……キス、していい?」
やっ……これは……ヤバいなぁ。
口に出すと余計、恥ずかしい。
だけど俺の素直な気持ち……
好きな人との初めての本気のキス。
琴音ちゃんは、真っ直ぐ俺に目を向けて
頷く。
「うん……いいよ。」
「でも、私キス初めてだから……」
「俺に任せて……。」
目を閉じそっと触れた唇は、
夕方の空気みたいに優しくて、
短いキスだった。
短いキスなのに、胸と唇に長く残る
感触。
キスが終わり、目を開ける。
私は緊張で指先をぎゅっと握り締めていた。
「はっ……初めてのキス。」
「すごくドキドキした。」
私がそう告げると、
理央君は、優しく微笑んでくれた。
「琴音ちゃん、俺も。」
「初めて自分から好きになってした」
「キスは琴音ちゃんだよ。」
「だから、ちゃんと大切にしたかった。」
その言葉に、私はじんわり胸が温かくなった。
「理央君……嬉しい。」
時計台の針がゆっくりと動く中、
俺は少し照れたながら、でも真剣な
声で言う。
「あのさ、琴音ちゃん。」
「ん?理央君どうしたの?」
「名前なんだけど……」
「俺達恋人になったわけだし、」
「君とか、ちゃんとか、なしで」
「呼び合わない?」
琴音ちゃんは、驚いた表情を
見せて黙っていた。
「無理ならいいんだ。」
「でも、もっと近くなりたいなぁつて」
「思ってさ。」
琴音ちゃんの口が空気のように
動き出した。
「りっ……理央///。」
私は理央君に言われて、
気付く。
そうだ私達、まだ友達感覚で呼び合って
たなぁと。
私ももっと、理央君に近づきたい。
私は恥ずかしながらも、
理央君の名前を呼び捨てで呼んだ。
「!!!」
「ヤバい……嬉しくて死にそう。」
琴音ちゃんから”理央”って呼ばれて
もう、俺の心臓が熱くなって壊れそう
だ。
この琴音ちゃんの声で呼ばれると
破壊力えぐいな。
「ええ!」
「死なないで(笑)」
「じゃ、もう1回呼んで?」
「うん……。」
「理央。」
今度は俺が……
息を吸ってからゆっくりと呼ぶ。
「琴音。」
「好きだよ……。」
そう言って俺は再び、琴音の唇に
そっと俺の唇を乗せた。
夕焼けの公園で、名前を呼び合った
だけなのに気分がこんなにも
浮かれてしまうんだ。
恋と言うは恐ろしい。


