──夕方17時
私は理央君の最寄り駅、
綾部駅へ着いて改札口を出て
理央君の家から近い川に来るように
指定された場所に向かう。
理央君の最寄り駅……
それだけで胸が跳ね上がり、
ラムネを飲んだ時みたいに弾ける。
ここは、理央君の日常なんだ……
ここで生まれてここで育って。
夕方の風は、昼間の暑さを少し残して
川面がオレンジ色に揺れている。
川沿いを少し歩くと、見覚えのある
かっこいい後ろ姿がベンチに座っていた。
理央君はすぐに後ろを振り向き、
私を見つけてベンチから立ち上がり、
照れたように微笑みながら、こちらに
手を振ってくる。
「理央君!」
「来てくれてありがとう!」
私はそう言って、理央君の傍まで駆け寄った。
”理央君、来てくれてありがとう!”
俺を呼ぶ声……
それを聞いただけで心が宙に舞う。
本当に琴音ちゃんはすごい。
琴音ちゃんに会うだけで、
声を聞くだけで、俺の中の不安を
全て一瞬で取っ払ってしまうんだ。
5日間の不安
考えた時間
逃げたくなった時間
全て琴音ちゃんだけを思った時間。
愛おしい……。
琴音ちゃんは俺の傍に来ると、
隣りに座る。
心臓がうるさくなる。
待つって決めてから5日間、
短いようで長かった。
「琴音ちゃん、夕方なのにまだ」
「少し暑いね。」
「うん。」
琴音ちゃんは頷いた。
緊張してるのが伝わる。
それだけでぎゅっと胸がいっぱいになる。
今日、答えを聞けるはず……
期待しすぎないように……。
でも、期待してしまう。
そんな中、川の流れの音がやけに
大きく聞こえた。
理央君の横顔をチラッと私は視線を向けた。
夕日に照らされた理央君の横顔は、
大人びて見えた。
もう私……どうしようもないくらい
理央君の沼にハマっている。
「理央君。」
名前を呼ぶと理央君の肩が少し動く。
「ん?何?」
声がすごく優しく心が落ち着く。
「晃にはちゃんと私の気持ち」
「話したよ。」
そう言った瞬間ら理央君の視線が
私に向かう。
理央君のは真剣で逃げない目を
していた。
「幼なじみのままでいたいって……」
「それ以上の気持ちはないって伝えた。」
心臓がキューっと長く締め付けられた。
「私……怖かった。」
「だけど、ちゃんとわかってくれた。」
両手の指先で自分のズボンをギュッと掴む。
「晃との今までが全て壊れて」
「しまうって思ってた。」
「怖かった。」
私の声が震えてるのがわかる。
俺は聞いてるだけで、胸が締め付けられる。
そんなに悩ませてたんだ……俺。
でも、途中で口を挟まない。
それが今俺にできること。
琴音ちゃんの言葉を全部聞く……
受け止める。
「でもね、5日間考え……」
私はまっすぐ理央君の顔を再び見る。
「私が一番辛かったのは、」
「理央君を、待たせてるって思うと」
「もう心がズキズキして」
「胸もギューってしめつけられる。」
「理央君を悲しませたくない。」
理央君が大きく目を開ける。


