1度冷静になった俺はふと思った。
好きなのは伝わったけど…なんで泣いてるんだ?


「沙夜ちゃん。できれば、ニコニコ顔で、好きだよ絃くんが聞きたいな」


ひっくひっくと嗚咽を漏らしながら、泣き止もうとしている。


「何が、しんどかった?ゆっくりでいいから教えてほしい」


しばらくして、目を赤くした沙夜ちゃんは口を開いた。


「ハグとか、色んな愛情表現、私よりずっと可愛い今までの彼女にしてきたんだろうなって思ったら、しんどかった。家で迫られた時だって、絃くんのことだから、もう経験済みだと思ってたから、他の女の子とこういうことしてたんだなって思ったら、もう限界だった」

「そっかそっか」

「優しく触れるのも、迫ってくるのも、好きって愛おしげに伝えてくるのも、全部私だけじゃないきゃ嫌」

「迫っていいの?」


自分でそう言ったくせに、沙夜ちゃんは、ふん、と顔を背けた。


「安心してよ沙夜ちゃん。俺が生涯愛するのは、沙夜ちゃんだけだよ」

「うん」

「沢山愛情表現するのも、男になるのも、沙夜ちゃんに何度も何度も好きって伝えるのは俺だけ」

「うん」

「だから約束して?…俺のことだけ見てて」

「分かった」


ただ1度だけ、甘く唇を重ねた。