翌朝。
今までより若干早いアラームで起き、チベットスナギツネのような顔で鏡に向かう。
制服に着替えて、リュックを持って、沙夜ちゃんと登校できる嬉しさでるんるんしながら外に出る。
高校の最寄り駅に着くと、ホームの外の隅で、退屈そうに下を向いてぼんやりしている沙夜ちゃんがいる。
いけない、待たせるなんてご法度だ!
俺は走って沙夜ちゃんの元へ。
「ごめん、待たせて!」
「着いたばっか」
「ううん、俺が先着いてないといけなかった。…行こっか」
「うん」
着いたばっかってのが、嘘か本当かは分からないけれど、一緒に登校する。
相変わらず俺の少し後ろを歩いて、沙夜ちゃんから何か話題を振ってくれるわけではない。
話題を振ってくれなんて思ってないけどさ。
「沙夜ちゃん、いつ放課後デートしよっか」
「…いつでも大丈夫だよ」
「じゃあ今日でもいい?」
「うん」
「どこ行こうかな!」
後ろを向いて、沙夜ちゃんの反応を見てみた。
何を考えてるか分からない、優しい微笑みを浮かべているだけだった。
どこ行きたい?って聞くのが怖かった。
どこでもいいよ、って言われるのが分かっていたから。
俺に関心無いんだなって、改めて実感するのが怖かったから。



