「好きだよ、沙夜ちゃん」
何度も言ってきた、沙夜ちゃんへ向けた好きという2文字の言葉。
紡ぐのは簡単だけど、それに想いを乗せるのは、相手がいて初めてできること。
「…好きっ」
そう、好きって。
「え?」
情けない声が出た。
「今…え…?」
顔が見たくて、腕を解こうとするが、なんか力入れてきて無理。
「聞き間違い?」
「…そうそ、聞き間違い」
「いや、今好きって…」
沙夜ちゃんに心臓の音が聞こえそうだ、というか聞こえてるだろう。
バクバクしている。
初めての、好きな子からの好き。
ぶっ倒れそう。
とうとう力が入らなくなってきて、膝から崩れ落ちるようにしゃがみこんだ。
「ふぅ…」
沙夜ちゃんも自分の椅子に腰掛けた。
難しい顔をしている。
さっき、可愛い声で、好きって言った子と同一人物とは思えないくらい。
「好きって言った?」
「言ってない」
「言ったよね」
「言ってない 」
「じゃあ分かった、言ってないんならキスしよ」
んぐぐ…と固まった。
「好きな人としかキスしないよね?それとも、好きって言ったから、今はしない?」
どっちに転んでも、沙夜ちゃんは俺のことが好きってことになるという。
難しい顔で悩んでいた。
抜け道を必死で考えているんだろう。



