沙夜オタだからね、オタクではあるかも。

…でも待てよ。

クッキーか。

自分で言うのはなんだけど、あの穂華にさえ顔面国宝と言われるだけあってモテてはきた。

今年は、彼女がいるのが知れ渡っているのか貰わなかったけど、例年のバレンタインデーはとにかく口の中甘くなる日だったし、ホワイトデーは色んな意味で大変な日だった。

貰ったことないんだよな、本命と思しきものでクッキーだけは。

逆に、クッキーでホワイトデーはお返ししていた…。


「なに、フリーズ?おーい」

「クッキーって、友達でいよう、じゃん…」


撃沈。

…そうか、俺、バレンタインに振られる悲しい男か。

がっくりしている傍で、きょとーんとしている沙夜ちゃん。


「友達でいよう?」


追い打ちをかけないでくれ…。


「何それ」


何それ?

そう呟いて、スマホで何やら調べだした。


「あっ、あげるお菓子によって意味が異なるんだ。へー」


今まであげてきた男たちは、さぞ勘違いしてきたんじゃなかろうか。

…なんだよ、今まで貰ってきた男とかいるのかよ。


「バレンタインなんて初めて渡したから、知らなかった」

「ん。穂華とか、友達には?渡したことないの?」


彼女は首を横に振った。


「穂華ちゃん、あたし作らないから!って言ってたからあげてないし、今までそんな親しい友達いたことないし…」