バレンタインデーになる。

うきうきで登校するが、沙夜ちゃんからチョコが貰える素振りがない。

休み時間毎に、チョコは?と行くも、知らぬ顔。

ぴえーん。忘れちゃったのー?


放課後、ぽけーっとして帰る様子のない沙夜ちゃんの前の席に、足を組んで座る。

いつもよりイケメンな顔を目指してみる。

…よく分からないけど、目指して沙夜ちゃんを見つめてみる。


「バレンタインは?」


ついでにイケボも目指してみる。


「うん?」

「うん?じゃないのよ」


自分が可愛いの理解してるんだな、そうなんだな。

とぼけるその顔すら愛おしい。


「しょうがないなー」


そう言って、沙夜ちゃんは机の中から何やら出してくる。


「はい」


出されたのは、手作りのアイシングクッキーだった。


「え?」

「え?じゃないのよ」


俺は思わず目を丸くする。

割と本気で貰えないと思ってた。


「これって…」

「いらないなら持って帰る」

「やだやだやだやだ」


慌てて手に取る。


「え、沙夜ちゃんこんな才能あったの…?能ある鷹は爪を隠すってやつか。ううん、そんなのどうでも良くて。…やっすいチョコの方が良かったかも。こんな素敵なの貰ったら、どうにかして永久保存したくなるじゃん。どうしたらいいかな、調べようかなガチで。え…愛する彼女からバレンタイン貰うって、こんな嬉しいんだ、やば」

「その辺のアニオタより喋るじゃん」