ローファーに履き替えて、校門を出る。
沙夜ちゃんは、相変わらず隙を見ては俺の少し後ろを歩こうとする。
控えめすぎるよ…。
彼女の横を歩きたい。
あわよくば手を繋ぎたい。
いつになったら叶う夢なのだろうか。
「あのさ、沙夜ちゃん」
「うん」
「俺、沙夜ちゃんとしたいこといっぱいあるんだ」
「うん」
「手を繋ぎたい。頭撫でたい。またぎゅーしたい。ちゅーしたい」
「うん」
「朝、駅からの道を2人で歩きたい。2人で昼ご飯食べたい。放課後デートしたい。休みの日も会いたい」
「うん」
ありきたりすぎて、沙夜ちゃんは退屈に思ってないだろうか。
だけどそんなささやかなことが願いだったりする。
少し後ろから、沙夜ちゃんの相槌しか聞こえない。
付き合ってほしいの答えは、いいよだけだった。
俺の、片想い…かなぁ、やっぱ。
浮かれてる場合じゃなかった。
好きって、思わせなきゃ。
駅にいつの間にか着いて、お互い反対方面だからそこでバイバイ。
寂しい。
「じゃあ、また明日!」
「また明日」
沙夜ちゃんはお腹辺りで手を振ってきた。
可愛いな…。
控えめな所は、確かに可愛い。
なんだけど、やっぱ控えめすぎて寂しいこともある。
二律背反ってやつかな。



