穂華が帰ると、病室内は静かになる。
気まずいよね、そりゃあ。
沙夜ちゃんは目を合わせてくれない。
それどころか、起こしていた体を横にして、窓に顔を向けた。
「ごめんなさい」
俺は頭を下げて謝った。
「沙夜ちゃんのこと、傷付けた。苦しめた。つらかったよね。俺、ほんと酷い奴だと思う」
俺に目を向けてくれない。
さっきの熟年夫婦って言っていたのも、体良く別れるための言葉に過ぎなかったのだろうか?
穂華がどうこうではなく、沙夜ちゃん以外の女の子とお似合いだと言われれば、多少なりともショックではある。
「ワガママだと思うけど、俺は別れたくない。沙夜ちゃんのことが1番好きだから。大切だから。…大切なのに、傷付けてしまったけど、これからは気を付ける。沙夜ちゃんのこと1番に考えるから、俺のことだけ見てて?」
マスクをしているから余計、沙夜ちゃんがどんな表情しているのか分からない。
相変わらずこちらには目を向けてくれない。
「こっち、向いて…?」
別れたくない。
怖いよ。
女々しいと言われても仕方ない。
それだけ夢中なんだよ、沙夜ちゃんに。



