放課後になって、そそくさと帰り支度をして沙夜ちゃんの席へ駆け寄る。
「沙夜ちゃん、帰ろ!」
面食らったような沙夜ちゃんの反応と、周りの目線が一様にこちらに向いたのが分かる。
え…そんな声大きかったかな。
「絃ぉ、アタック始めたん?」
俺の幼馴染で、沙夜ちゃんの友達の穂華がからかうようにニヤニヤしながら聞いてきた。
「もう彼女だし!」
「へ?」
拍子抜けした反応の穂華は、俺と沙夜ちゃんを交互に見る。
「え、マジ?」
「昼休みに告白した」
「ドヤ顔すんな」
「幸せ勝ち取ってやったわ」
穂華はガハハと豪快に笑う。
可愛い顔してると思うけど、なかなか男勝りなんだよな、この子…。
ま、1番可愛いのは沙夜ちゃんだけど!
「沙夜も幸せになるんだよ!」
穂華の声に、キョトンとした沙夜ちゃんが目を向ける。
ダメだ、キョトン顔も最高に可愛い。
「でも絃が初カレか…苦労しそう」
「なんでだよ」
「やっかみしてくる女子とかめんどくさそう。あたしはずっと絃見てるから何とも思わないけど、モテるし顔面国宝って言われるやん」
「はあ」
「自覚無いよな…」
顔面国宝?俺が?沙夜ちゃんの方がよっぽど国宝。
国総出で守りたい。
「まあ、なんとかなるって!やっかみで女子からどうとか、漫画の世界だけだよ。さあ沙夜ちゃん、帰ろ」
沙夜ちゃんは静かに頷いた。
「沙夜また明日!」
「うん」
彼女は穂華にこくりと頷いて、リュックを背負う。



