2駅前で彼女はヌッと起き上がった。

俺にくっついていたことには、何も触れてこない。

小悪魔だなぁ…。


沙夜ちゃんの最寄り駅はかなり大きい駅で、ライトアップされたでかでかとしたクリスマスツリーが、ベンチに囲まれて鎮座している。


「沙夜ちゃん、いいとこ住んでるね」

「…本当の最寄り駅じゃないからね」

「ん?」

「もっと近い駅あるけど、直通運転の電車乗らないといけないから、待つのめんどくさいし、プラス料金かかるの嫌だからここで降りること多いだけ」

「ああ、そゆことね」


第2の最寄り駅的なとこか。


「楽しかった。また来年。良いお年を」


単調に言葉を並べて、沙夜ちゃんは帰ろうとする。


「ちょっちょっちょっ…待ってよ」


彼女の手首を掴んで引き止めた。


「まだ、帰したくないよ」


俺と沙夜ちゃんの、今年のクリスマスが終わってしまう。

更に言えば、今年の2人の時間も、ここでバイバイしたら終わりになる。


「今年の沙夜ちゃん、見納めだから」

「来年なったって、別に変わらないよ」

「そうかもだけど…」


そういう問題じゃない。


「初詣、行こ?2人のこれからを守ってもらえるように願お?屋台回ろ?」

「元日しか空いてない」

「分かった、元日ね」