沙夜ちゃんに目をやると、何か言いたげに俺を見つめていた。
帰ろうとしたら、引き止めるのかな。
「帰るわ。じゃあ」
「絃くん、待って…ほしい、です」
引き止めてくれた。
立ち上がったままの俺と、座っている沙夜ちゃん。
沙夜ちゃんは立ち上がって俺の前にやってきた。
なんとなく、怖がっているようにも見える。
「ごめんなさい。ずっと避けてて」
他の男といたくせに。
でも、別にもう怒る気なんてないから、言わなかった。
沙夜ちゃんは謝ろうとしてくれているわけだし。
「央翔くんと、あとたまに泱翔先輩と過ごしてた。絃くんが嫌がるの分かってたのに」
「そっか。何してたの?」
「央翔くんとは、勉強教えたり、一緒に帰っておやつ食べたり。泱翔先輩は、カフェで話したりかな」
「うん。触られたりは?」
「ぎゅーとか、ちゅーとか、そういうのはされてないよ」
「うん、ひとまず良かった」
オドオドしてしまっている。
「絃くん、怒ってる?」
「もう怒ってないよ」
安心させるように、そう優しく言って、頭を撫でた。
「んっ」
「ねえ、沙夜ちゃん?」
「何?」
「俺のこと、好き?」
「好きだよ絃くん」
「俺も好きだよ、沙夜ちゃん」
「うんっ」
可愛い子だな、相変わらず。
俺は額にキスを落とす、そして抱き締める。
「もうどこにも行かないで」
「絃くんから、離れないよ」
「ほんと?」
腕を回してきて、こくんと頷いてくる。
腕を緩めて、そっと、唇を重ねた。



