1週間、沙夜ちゃんと口を利けてない。

朝も昼も放課後も別。

気まずいままだ。


ある放課後。

帰宅しようと最寄り駅に向かっていると、長身の大学生くらいのイケメンが、沙夜ちゃんに声をかけている。

また嫌な夢見てるのかな。

もう懲り懲りだよ。


見て見ぬふりして帰るわけにはいかない。


「俺の彼女なんすけど、何してんすか」


と噛み付く。

筋肉は俺の方がありそうだけど、俺より背は高い。


「先に告白してきたのはコイツだけど」

「はあ?」

「まあ、中学校の頃な」


どういうことだ?


「なんか見覚えあるなーと思って、声かけたら中学一緒の子で、めちゃめちゃ可愛くなってんの。ほっとくわけいかなくない?」

「そうですか、俺の大事な彼女なんで、離れてもらえます?」

「さっきから私、泱翔先輩に言ってるじゃないですか…彼氏いますって」

「ふーん…」


泱翔先輩というのか、意地悪そうに見てくるだけ。


「あっ、沙夜姐!兄貴もいるじゃん」


あ、央翔。

は?

兄貴?


兄のエイトと、弟のオト…おいおい、俺と名前似てるし!

兄弟揃って沙夜ちゃんに想い寄せてるし!


んで何?

真偽不明だけど、兄の方は沙夜ちゃん元好きな人?


頭が痛いね!

とんでもない四角関係の始まりだった。