「大和が残したパン食べとけば良かったー」
「朝から何も食べてないもんね」
デニムジャケットのポケットに手を突っ込んで、沙夜ちゃんは俺の横を歩く。
ふーん、手繋がないんだ。
俺は、沙夜ちゃんが自主的に手を繋いでくれるまで待つことにした。
コンビニに着く。
各々選んで、各々会計を済ませて、ただ袋だけまとめて帰路につく。
雑談しながら、いつも通りなのに…俺と手は繋いでくれない。
しゅん…静かな熱い夜は、幻だったのか。
それとも、それについて何も言わないだけで、不安から手を繋いでくれない…?
だとしたら逆に言わないといけないのか?
「絃くん」
「沙夜ちゃん」
ほぼ同時に名前を呼び合った。
「あっ…沙夜ちゃんから」
「絃くんから…」
互いに遠慮し合う。
「じゃあ私から」
「うん」
「絃くん、私のシャンプー使ったでしょ」
「ああうん、ダメだった?」
「いや…?一緒の香りで嬉しい」
「へへ」
すごく雑談だった。
「絃くんは何?」
「…何で手繋いでくれないの?」
「特になーんも考えてない」
「俺といる時は、ちゃんと俺のこと考えて」
「…はい」
「一緒じゃない時も、会いたい会いたい会いたいって頭の中いっぱいにしてよ」
「あ、はい」
顔面国宝と言われる顔で良かった。
俺の怖い顔は効くらしい。



