目を開く。
目の前で、沙夜ちゃんがすやすや眠っている。
俺の心臓付近に手を置いて。
なんとなく暗い。
動くのがなんとなく申し訳なくて、時計は見れないけど夕方か。
家の中で音がする。
えっ、ちょっ…ちょ!
でも沙夜ちゃん起こしちゃうし…どうしよう?!
必殺、寝たフリ!
「あら」
ママさんの声。
買い物から帰ってきたっぽい。
動じるな、何も怖くない。
「おかえりなさい、お父さん。あの子たち寝てるから、静かにね」
パパさんー!
「…ああ」
恐らくこちらを一瞥したのであろう反応。
明日の命は俺にあるのだろうか。
まだ沙夜ちゃんとしたいこと沢山あります。
どうか、命だけは…!
てか起きないね、沙夜ちゃん。
「何コイツら、事後かよ」
大和だな、分かった。
「母さん、沙夜の彼氏とは別で食うわ」
「はいはい」
ドアの少し雑な開閉音。
俺だってお前と食べるのは願い下げだバーカ。
「絃くんそんなとこ触んないで、えちー。へへ、やだー、えちー」
沙夜ちゃんの寝言か。
思わず目を開けた。
幸せそうな顔で、少しモゴモゴ言っている。
キッチンのママさんには聞こえてないだろう。
聞こえてたら、勘違いされる。
ひーっ。
「しよっ、絃くん。えちー」
なんだそのクセのある、えちーって。
あとね、沙夜ちゃん。
しよっ、じゃないよ。
30秒後くらいに、
「くーっ!」
と、伸びをして起きた。
生きた心地がしない、とはこのことか。



