体調不良を悟られる前に立ち去ろうとした。
目がチカっとした。
それで、クラっとした。
「絃くん?」
沙夜ちゃんの方に倒れ込んだ。
「きゃっ」
20kgくらいの体重差、予期せず急に、力無く倒れ込んできた俺に、支えることができるはずもなく、沙夜ちゃんは尻餅をついた。
「ど、え、どうしたの?」
額を触ってくる。
「すごい熱だよ?汗もかいてる」
てか尻痛…と呟く沙夜ちゃん。
ごめん…動けない…。
「沙夜?どうしたの、音したけどー」
沙夜ちゃんママらしき声がする。
「あら、なに?大丈夫?」
「ボストンバッグ、重いから家まで送るよって彼氏が…で、なんか急に倒れ込んできちゃって…」
「ああ、例の彼氏さん?名前なんだっけ」
「絃くん」
「そうだそうだ。絃くん、話せる?動ける?」
おっとりしたママさんが声をかけてくれる。
「かろうじて話せます…動くのは、よいしょ…なんとか」
沙夜ちゃんからなんとかどいた。
立ち上がって、
「お騒がせしました…お邪魔しまし…」
立ちくらみがしてしゃがみこむ。
「絃くん、無理に帰らない方がいいわよ。一旦ほら、上がって?」
俺はもう、這うようにして床に行き、座って靴を脱ぐ。
厚意に甘えることにした。
無理だ、帰れないこれ。
両側から沙夜ちゃんとママさんに支えられて、リビングのソファに座らされる。
「はい、これ体温計」
「うん…」
沙夜ちゃんが持ってきた体温計で熱を測ると、38,7℃の高熱。
この高熱の中、とはいえ徐々に上がったんだろうけど、重い荷物持って空港からよくここまで来たよ。
俺のこと尊敬する。



