「がくと……さん……」

 いつの間にか、誰かがそう言っているのが聞こえて。しばらくして、それが幼い自分の声だと気づいた。

 気づけば、身体に感覚が戻っていて。ゆっくり瞼を開けてみる。

 ぱち……。ぱち、ぱち。

 瞼を瞬かせてみる。しばらくして、風景の一部と思っていたものが母の顔だと気づいた。

「大丈夫!? ひいちゃん!」

 そう言い、泣きそうになる母。

 周りは見覚えのある部屋。

 ここは病室と呼ばれるところ。

 しかも、一度感じた見たようなこの情景。

(デジャヴ?)

 あれ……? デジャヴって言葉をなぜ知ってる?

 なぜ……?

「よかった、ひいちゃん……!」

 ずびずびと鼻水をすすり、みっともない泣き声とともに私に抱きついてくる母。

 やっぱり、知っている。

「お母さん……」

 このあと、何もない、てんかんの持病を持っているのかもしれないと、おじいちゃんの先生に診断される。

 てんかん? 何それ、と当時は思っていたが、今はそれへの知識がある。しかも、一人の『高木柊』の人生で知り得た知識、経験が。



 一体、何だったんだ?