最初に見えたのは、母の安堵した顔。

 夢を見たような暇もなく、ふと意識が戻った。

 次第に曖昧だった五感がはっきりしてくる。

「大丈夫!? ひいちゃん!」

「……まま?」

 母はびっくりした顔をすぐに安堵に変え、ぐわっと覆い被さってきた。

「よかった、よかった……!」

 子供のような泣き声で、ぎゅっと抱きしめてくれる母。

「ここは……?」

 周りはよく定期健診で来る場所だった。

「ここは病院よ、ひいちゃん救急車で運ばれたのよ」

「救急車……」

 確かに、あの独特な変な甘苦い匂いがするし、看護師のお姉さんもいる。静かな中で壁の向こうから談笑する声がかすかに聞こえてくるし、一体何だったのだろう。そう思った。

 すると、突然シャボン玉のような透明な泡がどこからか浮かんで来た。

「……? 何、あれ?」

 私が疑問符を浮かべていると、母の頭上辺りまで漂ってくる。

 母に、あれは何かな? と尋ねようとした時、
「うわっ!?」


 泡が私を吸い込んだのか、急に目の前が真っ暗になり、五感が消えていた。