彼は激しい怒りに駆られ衝動を抑えられないまま、小角族にとって命ともいえる娘の両角を強く掴みあげた。

「くっ、るし……おう…⋯じ、さ……」

「こんな娘など、魔力で苦しめてやるほどの事もない!! 非力な低魔族め……! 」

 しかし、

「死ぬ、の……? あた、し……」

「……。」

 彼は動きを止めた。
 涙目の娘が力無くうめく。

「っ……せっかく、王子様に会えたのに……お話、いっぱい……」

「っ、何が話だ…⋯!! お前も私に取り入るためだろう、誰がお前などに情けをくれてやるものか!! 」

 正直、心にモヤついたものは取れず、苛つきも増していた。
 しかしこんな事をした理由が自分のわがままで、子供じみていたのも分かっていた。

 泣き続ける娘を見ていると、胸の辺りが何故か痛んだ。

「……。」

 不器用なくせに、常に何でも前向きだった弟をまた思い出す。
 そして自身もまた、自分の感情に関しては不器用だったことを思い知った。

「もう良い……出て行け!! 」

「王子様ぁ! 」


 彼は泣きじゃくる娘を見えない壁を張って追い出し、兵士達に城の外へ出すよう命じた。
 そして自らは自室へと戻り、先程のことを考える暇もないほど要務に時を費やした。